スーパーの自転車置き場に4匹の子猫が捨てられていた。発見した人はひとまず警察に通報し、買い物を済ませてから様子を見に行ったが、残っていたのは1匹だけだった。放っておくこともできず、保護してフェイスブックで里親を募集した。
スーパーの自転車置き場に捨てられていた子猫たち
2011年8月、東京都にあるスーパーの自転車置き場にダンボール箱に入れて捨てられていた4匹の子猫がいた。ダンボール箱にはタオルと小さなえさの袋が入っていて、子猫たちは鳴いていた。
子猫たちを発見した人は、犬を飼っていたので猫を飼うことはできず、ひとまず警察に通報して、スーパーで買い物を済ませた。買い物をしてから戻って見てみると、3匹は誰かが持って行ったようで1匹だけ残っていた。
「猫は飼えないけど、見て見ぬふりはできない」と思い、保護したという。
保護主は、Facebookで「誰か親になってくれませんか」と、子猫の里親を募集した。FBの友達の富士さんは、投稿を見て、すぐに連絡した。富士さんは息子と二人暮らしの母子家庭。犬が好きだったが、面倒をみられないので飼わなかった。
「FBには小さな子猫が掲載されていて、なんだか呼ばれた気がしたんです」
俺が家族になってあげたい
富士さんは、息子さんと子猫に会いに行った。子猫は、10歳の息子さんの小さな両手に収まるサイズだった。まだ乳飲み子で、2時間に一回ミルクを与えなければならず、排泄も介助が必要だった。
富士さんが、「お前はどうしたい?」と息子に聞くと、「この子、俺の家族になりたいって」という答えが返ってきた。
「うちは老人と動物に優しくできれば馬鹿でもアホでもいいというのが教育方針。猫は長生きだから20年は面倒見なきゃいけないよ?今までみたいに旅行に行けないよ?もしかしたらこの子、病気で早く死んじゃうかもしれないよ?」
富士さんは息子にそう言いながら、内心、「子猫を連れて帰りたい」と思っていた。息子は、「分からないけど、俺が家族になってあげたい」と言った。
富士さんは、その日、子猫を家に連れて帰った。
折よくであった子猫
子猫の名前はアニメ「ワンピース」の登場人物にちなんでひびちゃんにした。
富士さんは、仕事も家事も育児もこなさねばならず何かと忙しかった。しかし、ひびちゃんを迎えた時はタイミングが良かった。富士さんは、勤めていた会社が本社移転したため退職し、ネイルの資格を取るために家にいた。そのため、ミルクやトイレの世話も無理なくできたという。
「このタイミングでひびと出会ったのは、縁があったのだと思います。犬より猫のほうが楽というわけではありませんが、散歩をしなくていいというのは、私たちのライフスタイルに合っていました」
子猫のひびちゃんは、とても可愛かった。よく飲み、よく寝て、すくすく大きくなっていった。
推定3、4カ月だったので、不妊手術は1月過ぎを予定していた。しかし、11月の下旬くらいから聞いたことがない声で鳴いた。夜、風呂場で鳴くので鳴き声が響き渡った。富士さんは寝不足になったので獣医師に相談した。
獣医師は、「(発情期には)早すぎるなあ。発情とは違う何かかもしれないから、1日預かります」と言った。しかし、翌日、「発情でした。手術をしましょう」と返事があり、不妊手術をしたという。子宮を摘出したところ、病気だったことも分かったので、発病を未然に防ぐことができた。
富士さんと息子はもともと仲が良かったが、ひびちゃんを迎えてから、妹が増えたように思えた。息子もひびちゃんがいると、留守番の寂しさが和らぎ、何よりひびちゃんに優しく接した。その優しさは、富士さんにとって嬉しい発見だった。