印刷がアートに!シルバーに光り輝くだけでない、進化した箔押し印刷「Sプリズムプリント」の世界へようこそ

國松 珠実 國松 珠実

1枚の絵を見せてもらった。

繊細なシルバーの光沢は、見る角度によって色が変化したり、形が浮き出たりする。光で奥行きを表現することも可能だ。まるで紙そのものがたっぷりと光を含んだようで、しっとりと品があり、美しい。

おすすめのモチーフは「満月」。青白く光る月の表面に幾重にも陰影を重ね、クレーターを表現する。このような神秘的な印象をかもし出すのは、進化した箔押し印刷技術だ。

これまでと「逆」に。ポイントは箔へのデザイン

 特殊な箔印刷技術、「Sプリズムプリント」を行うのは、大阪市東成区にある「サンクラール」。印刷で表現の幅を広げ、芸術レベルにまでに引き上げようと取り組むのは、国内でもここだけだ。 

印刷の上に、金箔や銀箔などの箔を押す「箔押し印刷」は、以前からある。ところがSプリズムプリントは、逆に箔の上から印刷を重ねる。

サンクラール代表の矢田幸史さんは、「順番を逆にしただけでいろいろな制約が出るし、そもそも完成した箔と印刷を合わせるのが難しい」という。でもそうすれば、箔が自然と絵になじむ。

さらに箔の表面に、放射線状や同心円状、他にもデザイン性の高い模様を直接描く。そうやって光らせ方をコントロール。その上にピンクやブルー、グリーンといったさまざまな色を配合、調整しながらのせ、ありとあらゆる色の箔表現を可能にしている。

「箔にデザインし、さらに細かい色変化までつけられる企業はほとんどありません」。

 美しい印刷技術を、世界へ発信する

 このSプリズムプリントは、サンクラールと、大阪の鶴見区にある東亜工芸社との協力で行われている。

「箔押しは、もともと東亜工芸社さんが持っていた技術。3年半ほど前に初めて見た時、『こんなにきれいな印刷物は他にない』と衝撃を受けた」。しかしそれほどの技術が全く世間に発信できていなかった。「自分がやりたい」と、以来協業し、Sプリズムプリントを広めるためにさまざまな商品を生み出してきた。

『むか~し昔カレンダー』もそのひとつ。東亜工芸社の商品を矢田さんが引継ぎ、内容を一新。カレンダーデザインはクリエイターからの公募と依頼で、優れた作品をSプリズムプリントで仕上げる。「印刷がアート作品になった」とクリエイターも満足という。

最近ではタレントの西野亮廣さんの『えんとつ町のプペル』の画に、Sプリズムプリントを施した作品を制作、額装販売。以前から西野さんのファンでオンラインサロンにも参加していた縁で、ご本人にも見てもらったという作品は、昨年12月に大阪梅田の阪急三番街のKAWACHI画材や、東京の西武渋谷店、渋谷蔦屋書店にも出展した。

18歳から印刷工場にこもり、インキと機械を前に技術を磨いてきた、自称印刷オタクの矢田さん。そこに自身のアート好きと、2代目社長としての頑張りで、ここまでやってきた。

「Sプリズムプリントは、世界で一番美しい印刷。世界に向けて発信してきたい」。

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