プロ野球の阪神などで捕手として活躍した片岡新之介さん(73)は、昨年12月から高校球界の古豪で初代ミスタータイガースの故・藤村富美男さんらを輩出した呉港の監督を務めている。
西鉄(現西武)、阪神、阪急(現オリックス)で現役16年、引退後は広島のコーチとして17年そして社会人、専門学校の16年の指導を経て初めて高校野球の舞台に立っている。これまでの経験を生かし古豪復活へのプロローグの1年を過ごした。
「高校野球の純粋さ、子どもたちの反応も変わってきた。上手な子、下手な子はいるが、その子のレベルに合った精神的充実感をもたせるか」
監督1年目は夏の広島独自大会、秋の広島大会ともに準々決勝に進出、いずれも伝統校の広島商に敗れた。周囲から評価もあるが、「負けたことは事実。勝ってなんぼ」と、自らに厳しい言葉を投げかけた。
これは片岡さんのプロ人生にある。小学生のころにあこがれた伝統校・倉敷工で硬式野球をはじめ大学、社会人野球を経てプロ入り。3球団をわたり歩いたが規定打席には一度も届いていない。それでもプロで16年もユニホームを着続けた。
「常にチャレンジする気持ちがあった。何か一つライバルに勝ちたいと思ってやってきた。阪神時代は田淵(幸一)さんがいたけど、守ることだけは勝てると。2番手は常に1番を狙わないと、2番ならいつでもできると思っていたら下の者にすぐ抜かされる」
合理的な練習方法に加え時には雷を落とすこともある。この1年で収穫もあった。ほとんどの3年生が「大好きな野球をやりたい」と次のステージでも野球を続けるという。また、来年度入学の問い合わせが急増している。
3月には関西遠征を組みセンバツ大会を観戦する予定でいる。「言葉でいう甲子園じゃなく、血の騒ぐこともしないと。大先輩が築き上げたものを見せたいんだ」。近年、甲子園から遠ざかっているものの、戦前は夏の選手権大会で全国制覇を果たすなど、春夏11度の甲子園出場を誇る。「まずはみなさんから『ごこう』と読んでもらえるようにしないと。『くれみなと』としか読まんから」。古豪復活に野球人生をかける。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・岩本 隆)