初詣列車は“運賃半額”も 明治の初詣の鉄道広告はすごかった

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 新型コロナウイルスが感染拡大する中、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は初詣について、混雑する時期を避けるよう呼び掛けています。ところで、この初詣はいつ始まったのでしょう。明治時代、鉄道の発達に伴い、運賃割引や特別列車運行とともに初詣の風習が定着したことが近年、成田山新勝寺(千葉県成田市)や川崎大師(川崎市)の例で知られるようになってきました。では、寺社の多い京都ではいつから初詣の習慣や列車の特別運行は始まったのでしょうか?明治時代の京都の新聞で初詣に関わる臨時列車の広告を調べてみました。

 2012年、神奈川大准教授の平山昇さんの著書「鉄道が変えた社寺参詣」(交通新聞社新書)が出版されて以降、初詣が鉄道会社の集客競争によって広まっていった経緯がよく知られるようになりました。

 では、社寺の多い京都ではどうだったのでしょうか?明治時代の京都の新聞をたぐってみましょう。1890年代の年末年始の新聞を順次見てみます。見る限り、鉄道会社による「新年キャンペーン広告」が最初に登場するのは1894(明治27)年12月29日付の「日出新聞」(京都新聞の前身の一つ)です。

 この日の新聞には、草津線などを敷設した関西鉄道と、JR参宮線の前身、参宮鉄道の連名による広告が載っています。

 広告には「参宮関西汽車賃割引広告」と題して「年越及び新年伊勢参宮の御便利をはかり本月三十一日より来年一月三日まで関西線は草津、亀山、四日市、桑名より宮川まで三割引。参宮線は三十一日(年越し)には津をはじめ各駅より宮川まで三割引」と案内しています。つまり、12月31日から1月3日まで当時の終着駅で伊勢神宮に最も近い宮川駅(三重県伊勢市)までの切符を30%引きにする、というわけです。

 しかし、この広告は京都から直線距離で約100キロ離れた伊勢神宮参拝の案内です。もう少し近くの神社の参拝者を当て込んだ広告はないのでしょうか。

 1897(明治30)年1月1日付の「日出新聞」には、奈良鉄道(現在のJR奈良線)による広告が掲載されています。「汽車旅客賃大割引」というタイトルの広告の文面を読むと、1月1日から3日間、神社参拝やあいさつ回りの人のために運賃を20%引きに、また、1月5日の県(あがた)神社(京都府宇治市)の「初あがた」のために2日間使用できる往復30%引きの切符を発売する、という内容でした。

 この広告から約2年後の1898(明治31)年の年末、12月30日付けの新聞には「奈良鉄道半減広告」として、運賃が半額になると書かれています。2年で割引率が大幅に増えています。

 さらに1899(明治32)年の年末になると、大阪環状線などの前身の大阪鉄道と関西鉄道・参宮鉄道連名の広告が同じ日に載るなどニーズが増し、競争が激化していることがよく分かります。

 こうして見ていると、人々が鉄道に乗って新年の神社参拝をするようになって120年余りが経過しているようです。2021年の新春だけは、混み合う境内や列車を避け、ゆっくりと神前に手を合わせたいものです。

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