やすらかに暮らすための終の棲家で何が? グループホームでのいじめ問題が話題に「なんか、悲しい。」

中将 タカノリ 中将 タカノリ

グループホームでのいじめ問題がSNS上で大きな注目を集めている。

きっかけになったのは漫画家の杉本亜未(すぎもと あみ)さんの「91歳になった大叔母が今年グループホームに入ったのだが、そこではシニア同士でいじめが蔓延しており、いじめられている弱いおばあさんを庇って大叔母がいじめおばあさん軍団と大喧嘩しているそうで、人間は老いも若きも命あるうちは修羅の獣道しかないのだと知る」という投稿。

老後をやすらかに暮らせるよう、終の棲家として選んだ場所でいじめが起こっているという人間社会の悲しさ…杉本さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは「年寄り同士での喧嘩あるの?歳取ったら大人しくなるのかと思ってた…」「モテるおじいさんの取り合いなんかもあるそうです。」「どこの世界もそういう人は居るのですよね。。なんか、悲しい。」など数々の嘆きのコメントが寄せられている。

杉本さんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):いじめを注意するのは若者でも気が引けるものですが、ご高齢にも関わらずそれを買って出る大叔母さんはすばらしいご人格ですね。

杉本:大叔母は非常に正義感が強く、生き物が好きで、足腰が弱る以前は保護猫活動に奔走していました。なついていない野良猫でもケガをしていると心配して、獣医さんと二人で夜な夜な近隣をパトロールし、ひっかかれたり怪我をしながらも大きな網で捕獲して自費で治療したり、行き場のない猫たちにご飯をあげに行って「猫を駆除しろ」と言って脅かして来る近所の人と戦ったりもしていました。猫だけでなく生き物全般が好きなので、ハエに「ブンちゃん」クモに「クーちゃん」と名前を付け可愛がっていました。心が熱く、弱い者いじめが大嫌いな人です。

中将:大叔母さんはグループホームのいじめ問題についてどのようにおっしゃっておられるのでしょうか?

杉本:大叔母の話ですと、いつもスタッフがいなくなったあたりで、弱い人に対して言葉のいじめが始まるので「やめなさいよ!」と都度叱っているとの事でした。弱い人がいじめられることは我慢ならないそうですが、ホームのスタッフの方はいい方ばかりでとても一生懸命やってくれているので、なかなか言い出しにくいとのことです。

またいじめのターゲットになる人がその時々で変わるので「この人がいじめられている」と確実に言いづらいそうで、自分が見たら注意しているそうです。とにかく弱い人がいじめられていると我慢ができないそうです。そんな事もあってか、ちょっと話すぐらいの人はいてもホームで親しい友達ができず、気持ちは寂しいとのことです。

大叔母は私に話す時もとても怒っていて、でもスタッフさんがちゃんとやってくれているということも話すので、それだけにいじめがあるんだと言いにくいという気持ちもわかる気がしました。

中将:学校で起こるようないじめと同じことがグループホームでも起こっているんですね…。このことを知った時、杉本さんはどのように感じられましたか?

杉本:残念な事ですが、できればホームと入居者、家族の間でなんらかのメンタルケアか話し合いをして欲しいと思いました。老後を安らかに過ごしたいと思って入居するわけですから、住環境だけでなく精神面の配慮もしてくださるべきだと思います。例えば病院の様にご意見箱を設置する、定期的にアンケートを取るなど、入居者の声が直ぐにスタッフに届く配慮が必要かと思います

「杉本亜未(すぎもと あみ)」プロフィール


2月27日生まれ、横浜市出身。うお座O型。
「JUNE」(サン出版)の「竹宮惠子のお絵かき教室」への投稿がデビューのきっかけとなる。2006年から2014年まで「Dモーニング」で日本で初めてディスレクシア(失読症)の主人公を描いた「ファンタジウム」(講談社)を連載し話題に。
現在はマンガMeeでサスペンススリラー「ブラッディチャイナタウン」(集英社)を連載中。

・「ファンタジウム」(リンク
・「ブラッディチャイナタウン」(リンク

 ◇ ◇

杉本さんのお話をうかがっていると、グループホームでのいじめは学校で起こるいじめと本質的に全く同じだということに気付かされた。人生経験を経ても人間の醜さ、愚かさに変わりはないのだと思うと悲しくなるが、それはともかく施設にはこういった問題の発生をいち早く把握し、改善させる義務があるはずだ。杉本さんの発信が問題提起として少しでも多くの業界関係者に届けばいいのだが。

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