お弁当の生産ライン…隣で働いているのは、人と思ったら人型ロボット? 人材派遣会社がロボット派遣準備中

渡辺 晴子 渡辺 晴子

人がロボットと一緒に働く“未来”は近い?――製造業や物流業に特化した人材派遣サービスを展開する「ウィルオブ・ファクトリー」(東京都千代田区、土肥貞之社長)は来年春から、人材派遣とセットに食品盛り付け作業の人型協働ロボット「Foodly(フードリー)」の導入サービスを、主に派遣先の食品工場に向けて始める準備を進めている。「Foodly」を開発したロボットベンチャー企業「アールティ」(東京都千代田区、中川友紀子社長)と販売代理店契約をしており、2021年初頭にも標準モデルの発売を予定。既に導入を検討している企業もあるという。

「Foodly」は、食品工場のベルトコンベアのラインなどで人と並びながら弁当の盛り付け作業などができる協働ロボット。導入されれば、工場で慢性的に不足している人手をロボットで補えるとともに、人の毛髪や爪などの異物混入のリスクも低減されるという。さらに、人との間に設置すればコロナ禍における作業現場での「3密」を避けられソーシャルディスタンスも保てるとあって、工場内の作業にも一役を買いそうだ。

ベンチャー企業が食品盛り付けAIロボットを開発、人手不足などに一役か

「Foodly」の開発は、食品工場内の人手不足の解消やウィルス・異物混入の対策として2016年からスタート。もともと弁当のおかずの盛り付け作業などはロボットによる自動化が難しいとされていたが、今回ディープラーニング(深層学習)を活用した AI 搭載のロボット開発を実現した。

ばら積みの食材をトング型の手で1つ1つ認識してピッキングし、弁当箱やトレイへの盛り付け作業を行える「Foodly」。人と隣り合わせで安全に作業ができるよう小柄な成人サイズ(高さ:153cm、重さ:35kg、横幅:40cm)にしたという。

また、各工場の条件・作業に合わせてあらかじめプログラミングを設定しておくので、担当の派遣社員などがタッチパネルで画面の指示に従って簡単に操作が可能。さらに1台に複数の食材・容器を登録すれば、さまざまななラインにも対応できるようになっている。

現在、ピッキングできる食材は、からあげ、ミニトマト、いなり、肉団子、ハンバーグなど10種類以上。導入前には食材テストや導入試験なども行えるという。

2021年初頭に販売予定だが・・・1台800万から リース・月額提供も検討中

しかし、ロボットの価格は1台800万円からと高額だ。これから導入を進めていくにあたり、「ウィルオブ・ファクトリー」を傘下に持つ人材派遣会社「ウィルグループ」コーポレート・コミュニケーション部広報担当の小山育美さんは「確かに、ロボット自体は決して安いものではありません。ですから、主に大量生産を行っている大規模な工場を持つ企業さまがターゲットになってくるかと思います。原則は受注生産となっておりますが、購入していただくだけではなく、ロボットをリース形式で貸し出したり、サブスクのような形式で月額でご提供したりと企業さまが少しでも導入しやすい方法も検討中です」と話す。

コロナで冷凍食品・コンビニ向け弁当などの需要増、ロボット導入に加速?

一方で、今年春ごろから猛威を振るう新型コロナウィルス感染が始まったことで、ロボット導入の動きも加速しそうだという小山さん。「食品工場の中でも、国内外の観光客に向けたおみやげ用のお菓子などを扱っている工場の生産は減少傾向ではありますが、冷凍食品をはじめコンビニエンスストア向けのお弁当などを製造する工場の需要は増えています。ですので、食品関連の企業さまの中には『もっと人を入れてほしい』というご要望も多々あります。そんな食品業界のお声に応えるためにも、各企業さまのヒアリングを行いながら感染対策を含めたロボット導入のご提案をしていくつもりです」。

人材派遣は減少しても、ロボットが異物混入や急な人材欠員なども解決 

とはいっても、人の代わりにロボット導入することで派遣する人数が減らされるというリスクも抱えるのは人材派遣会社側。それでも導入を後押ししていく理由は「今後、ロボットを入れることで、工場に10人派遣していた社員が半分に減らされるということは、当然出てくると思います。ただ、コロナが起こる前から食品工場では異物混入や派遣社員の急な休みによる欠員などの対策は課題になっていました。そういった意味でも、ロボットがこれまで抱えていた課題を解決してくれることは大変ありがたいことです。私たち人材派遣会社もロボットというテクノロジーに頼る時代がやってきたのだと感じます」と小山さん。

「来年4月ごろから導入される企業さまに関しては、まず1台ロボットを置いてそのロボットを操作する専任の人材を1人入れることを想定。将来的には工場内のラインの半分くらいはロボットを導入できたらと考えています」とし、食品工場のニューノーマルな未来の実現を目指している。

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「Foodly」は、常に工場内にいるので虫や菌の持ち込みを防ぐことが可能。外側にはネジがないのでネジや金属片の混入は避けられる。トングは簡単に交換や洗浄ができて作業着も着せることができ、ボディも拭きやすく清潔に保てるという。本体はキャスター付きで移動も楽で、バッテリー式なのでどこでも置けて電源配線工事もないとのこと。

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▽株式会社ウィルオブ・ファクトリー

2009年4月設立。主に工場における軽作業を中心とした工程の業務請負、作業スタッフの人材派遣・紹介などの人材サービスや、技能実習生・特定技能者、エンジニアなど外国人採用における就労支援サービスも展開。昨年10月に「エフエージェイ」から商号変更。派遣スタッフ登録数は約25.5万人という。

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