お風呂で溺死も…冬場に急増「ヒートショック」による突然死 その対策8カ条とは?

ドクター備忘録

尾原 徹司 尾原 徹司

 例年、12月から2月にかけ、入浴中に突然死する人が増えます。日本では湯船につかる習慣があり、お風呂は1日の疲れを癒す格好の場ともなっています。しかし、脱衣場所と浴室内、あるいは洗い場と湯船との急激な温度差で、血圧が大きく変動する「ヒートショック」には十分な注意が必要です。

ヒートショックとは?

 冬の到来です。寒くなると、室外と建物の中ではかなり温度が違ってきます。温度の激しい変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が引き起こされやすくなります。このように、温度差による肉体的な打撃を「ヒートショック」といいます。

 ヒートショックになりやすい場所として一番にあげたいのは「浴室」です。冷たい浴室でいきなり熱いシャワー、脱衣室から温かい湯船に入るなど、今までなにげなくしていた入浴が実は危ないのです。急激な温度変化で、血圧が上下して、心臓をはじめ全身の血管に異変が起こるかもしれません。

 ヒートショックによって、心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中、不整脈などリスクは高まります。また、ヒートショックによる血圧の変動などで意識を失い、浴槽で溺死する事故も起こっています。実際、冬場の入浴中の死亡率は他の季節よりかなり高く、そのため、温度差によるヒートショックが原因の多くでは…と考えられます。

 ヒートショックが起こるのは浴室だけではありません。近年、トイレでなる人も少なくありません。また、暖かい室内から寒い廊下へ移動するときになることもあります。つまり、急激な寒暖差が、危ないのです。誰でもなる可能性がありますが、なかでも注意してほしいのが、生活習慣病など持病のある人や高齢者です。

お風呂でのヒートショック対策8か条

 これからの季節、入浴でのヒートショック対策は欠かせません。

(1)脱衣所や浴室は暖かく!
 血圧の変動を防ぐには、脱衣所や浴室は暖かくしておきたいものです。浴室は入浴の少し前には浴槽のフタを開けて、湯気を回して浴室を暖めましょう。脱衣所も暖房などで暖かくしておきたいですね。

(2)湯温は熱過ぎないこと!
 湯温は適温で。浴槽のフタを開けておくと、湯温も少し下がります。熱すぎると、冷えた体がビックリするので、要注意です。

(3)飲酒後の入浴はダメ!
 飲酒すると血圧が下がります。加えて、入浴すると血管が拡張し、血圧はさらに下がるので、脳卒中などを起こす危険性もあり、飲酒後の入浴は避けてください。

(4)入浴前に血圧測定を!
 血圧が高くて体調が悪くても気付きにくいことがあります。血圧が高いときは気をつけてください。

(5)体調が悪い人はバツ!
 体調が悪かったり、疲れ過ぎていたりする時の入浴は逆効果なので、避けましょう。

(6)ゆっくり浴槽から出ましょう!
 湯に浸かっているときは体が温められ、血管が弛緩して血圧が低下しているといえましょう。そのような状態で急に立ち上がるのは危険です。血液が脳まで届かず、めまいを起こしたり、失神したりすることもあります。ゆっくり立ち上がる習慣をつけてください。

(7)長湯は禁物!
 長湯や高温での入浴は「のぼせ」や「湯あたり」につながります。体が暖まりすぎて、血管が広がり、血圧が低下して体調不良が置きやすくなります。怖いのは、気づかないうちに倒れてしまい、倒れているのが発見された時には溺死となっていることもありますので、要注意です。

(8)入浴前後には水分補給
 入浴中にはかなりの水分が失われます。そこで、入浴前と入後には水分補給をお忘れなく。

 なお、ヒートショックによる急死は入浴中に多発しています。しかし、入浴した後も油断は禁物です。というのも、温まった体が急に冷える血圧の変動は入浴後、数時間は続くといわれているからです。この冬も急激な温度変化には、十分、気をつけてくださいね。

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