「福家」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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「福家」と書いて、「ふくいえ」でも「ふくや」でもない読み方がある。香川県に多いため同県の人にとってはごく当たり前の読み方で、これで「ふけ」と読む。
江戸時代以前の日本では経済の主体は米であった。米は年貢として納めるだけではなく、中世では貨幣の代わりとして物々交換で広く利用されていた。米の生産量は経済規模と同じで、いかに米の収穫を増やすは為政者の重要な使命であった。
こうした時代には、稲の生育に適した低湿地は重要な場所で、各地で様々な呼び方がされた。北関東では「あくつ」といい、中部地方では「あわら」ともいう。西日本では「ふけ」と呼ばれることが多く、これに色々な漢字をあてて、各地に地名や名字が生まれた。滋賀県の「浮気」、広島県の「普家」、長崎県の「泓」、熊本県の「富家」などはいずれもこうして生まれた名字だ。
香川県では、「ふけ」に「福をもたらす」という意味の縁起のいい漢字をあて「福家」としたのが由来。現在、香川県で100位以内に入るメジャーな名字で、高松市や綾川町に集中している。