子どもの頃、2つのお菓子を前に、母親から「どっちか1つにしなさい」と言われ、「どちらにしようかな てんのかみさまの いうとおり」と指を交互に差しながら節をつけて歌った記憶があります。これに続くフレーズが今、ネット上でにわかに話題となっています。
筆者の場合は「どちらにしようかな てんのかみさまのいうとおり あのねのね」。昭和50年代、幼少期を過ごした東京の中央線沿いの小さな町ではこれが当たり前でした。しかし福岡県出身の家族は「けけけの けむし」。神戸育ちの同僚は「あっぷっぷっの かきのたね」。
「趣味で収集」データベースがスゴイ!
さらに調べると「どっちの神様 県別一覧表」なる膨大なデータベースをインターネット上で公開している方がいらっしゃいました。管理人は甲南女子大学(神戸市東灘区)兼任講師の田中千晶先生。
上代文学が専門の田中先生は1999年、「託宣を下す神様の種類とその地域分布について探る」ことを目的に、趣味の一環で収集を始めました。調査方法はアンケート用紙による実地調査とウェブ調査の2本立て。歌の全文と使っていた当時の居住地、現在の年齢を尋ねる内容です。投稿数は2014年の時点で557件超。投稿内容は投稿年別と都道府県別に公開しています。
歌の前半部分は大多数が「神様の言う通り」「天の神様の言う通り」でしたが、地域によっては「奈良の大仏さまに聞いたらよくわかる」、「書写の観音さんに」(姫路)、「裏のおいべっさんに」(愛媛)など、地域性が現れるフレーズもちらほら。
後半は、北海道の「なのなのなすびの柿の種」、岩手の「赤とんぼ白とんぼやややのや」、愛知の「鉄砲撃ってばんばんばん」、大阪の「ぷっとこいてぷっとこいてぷぷぷ」などバラエティに富んでいます。
「擬音語バージョン面白い」
やはり地域性があるのでしょうか。田中先生は「こういった分野の専門家ではないので」と断った上で、次のように述べました。
「地域で線引きというか区分けをすることは、大まかにはできるかなとは思います。しかし、県内でもずいぶんと違うところもあります。隣の小学校ではちょっと違っているという感じで、おそらく『学区』単位での細かい差異があるのではないか、ということを想定しています」(田中先生)
収集していて印象に残ったフレーズについて、「数は少ないですが、秋田県の擬音語バージョンは面白いですね。鳥取と島根などは同じものがないという、バリエーションの多さが面白いです」と教えてくれました。確かに同データベースの秋田県の欄には「ぺっちゃかぽっちゃか」「どんぴゃっぴゃどんぴゃっぴゃ」など、県外では聞き慣れないフレーズが並びます。
田中先生の収集は現在も進行中。ウェブアンケートも受付中だそうです。「更新が滞っております…更新がんばります」(田中先生)。
「どちらにしようかな」あなたは何と歌っていましたか?
▽どっちの神様 県別一覧表 http://docchi.fan.coocan.jp/docchi-p.htm