閉店を知りみんな来てくれた「皿洗いで無料」の王将いよいよラスト 店主が語った思いとは

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 「食後30分間の皿洗いで1食無料のサービス」で知られた「餃子の王将」出町店(京都市上京区)がいよいよ10月31日で閉店します。閉店まで数日後と迫った10月下旬、店主の井上定博さん(70)を訪ねました。井上さんは冗談を交えながら、閉店報道からの2カ月と最後の思いを語ってくれました。

 餃子の王将出町店は「皿洗いで無料サービス」でよく知られ、懐事情の厳しい大学生たちに親しまれました。2018年暮れからは、仕送りが遅れているなどの理由で前日から食事を取っていない学生に限り、皿洗いをしなくても無料で食事を提供する形式に変更となりました。

 多くの学生の胃袋と心を満たしてきた出町店ですが、今年8月下旬、井上さんは自身の年齢や後継者の不在などから10月末閉店を決断しました。

 -もうすぐ閉店ですが、やはり寂しいですか?

 「寂しいなあ。閉店の記事を書いてもらってからお客さんがすごい増えたわ。ずーっと忙しい。あっちこっちから元学生が来てくれる。『お世話になりました』言うてね。九州や四国に、広島や東京の子もいた。『土曜日や日曜日は混むやろ』と気を遣って、仕事休んで平日に来てくれる」

 「(閉店決定の記事が出て)2カ月、会いたいなと思ってた子はほとんど、この出町のおっさんに会いに来てくれた。みんな来てくれて、こうして花を持ってきてくれる。『最後に』『お別れに』と言うて花を持ってこられたら、なんか俺死ぬんかと思うわ」

 -元学生たちとどんな会話をしましたか?

 「(京都府立医科大が近いため)医者になった子が多かったな。『脳外科医になったからタダで診察したるで』『手術のときは俺が紹介したる』とか。弁護士もいた。坊さんもいた。『死んだらタダで拝んだる』って」

 -そういえば、ずいぶん前に貸したお金が返ってきたとか?

 「36年前にお金貸してた人が返してくれた。(井上店主が)とっくに死んでると思われてたみたいやけど、記事に写真が載って生きてると分かったって。ずっと気になってたみたいで、記事が出た後に飛んできた」

 -閉店後はどうされますか?

 「テナントの契約とかあるから、そういう処理を11月いっぱいはする。その後は嫁さんと旅行。ちょっと疲れたから休む。嫁さんがいいと言うてくれたら、なんか店をしたいな」

 -また飲食店をしてくれるんですか?

 「みんな『さみしい』『いつからまた店をするの』と聞いてくる。店の近所の人も『あんた、次どこで会えんねん』と聞くから、ぽろっと『また店するがな』と言うてしもた」

 「80、90歳になっても、ぼけんで(認知症にならないように)店をやりたい。家に引きこもってたら、みんなに迷惑掛かるし、店したい」

 -10月31日は何時まで営業されますか?

 「ギョーザがなくなるまで。残ったら捨てなあかんのはもったいないやん」

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