「岐阜県はなぜパッとしないのか?」SNSで話題の疑問について考えてみた

中将 タカノリ 中将 タカノリ

せっかくなのでもう一人、僕の身近な人にも聞いてみた。太田さんは岐阜市出身で大学時代から東京都在住のアラフォー会社員。岐阜と日本酒をこよなく愛すナイスガイだ。

中将:太田さんの岐阜での生い立ちをざっくりお聞かせください。

太田:岐阜市の中心部、美川憲一さんの「柳ケ瀬ブルース」で歌われている、柳ケ瀬の近くで生まれ、18歳まで過ごしました。両親も岐阜出身ですが、父は小学校から東京育ち。上京することに理解があったため、大学1年からずっと東京です。今年41歳ですから、もう人生の半分以上は東京ですね。

中将:岐阜と東京と両方知る方として、これまで岐阜の魅力があまり発信されていないと感じることはありましたか?

太田:たしかに岐阜の魅力はあまり発信されていないと思います。岐阜市について言えば、観光客が来るような催しは「鵜飼い」くらいだと思いますが、お客さんは減っていると聞きます。観光の選択肢として岐阜の鵜飼いを選んだという友人の話を聞いたことがありませんから、納得ができる話です。

まず、岐阜の魅力は非常に地味なんです。川がきれいで都市部でも水がおいしい、時間がゆったり流れているといった、日常に根ざしたものなので、それがいいところであると気付く人は、旅行者や、他所から移住をした人でしょう。

帰省して感じるのは、私が住んでいた20年前よりもおいしいお店が増えたということ。地域による違いはあるのかもしれませんが、生活の質は上がっているのでは?と感じます。今はネットの普及により、ニッチなニーズの買い物もできますし、映像コンテンツも観られます。私が子どもの頃は、人気の漫画のアニメ化であっても放送されない「一部地域」に入っていましたが、今ではそのようなことはないでしょうから。

私が知っている限りで、岐阜市はヴィレッジヴァンガードが3回出店して3回潰れています。若い頃はそういった文化レベルについて呆れていたものですが、今や当時の私と同様の価値観の中高生も、ネットでそれなりに楽しく生活ができているはずです。のんびり生活し、趣味の消費を楽しむのなら、暮らすのには非常に恵まれた環境だと思います。

中将:僕も奈良市出身なので太田さんのおっしゃることはよくわかります。奈良は大仏があるのでまだ観光面ではまだ救われてますが、やることが地味だしヴィレッジヴァンガードもよく潰れます。
そう言えば太田さんのご実家は喫茶店を営んでおられますが、岐阜は喫茶代消費額が日本一の喫茶文化が盛んな地域ということですね。これまで岐阜の喫茶文化の深みや個性を感じることはありましたか?

太田:のんびり生活できるという点で、一人時間や、まさしく「茶飲み友達」との時間を過ごすために通っているのかもしれませんね。実家の店も常連が多く、モーニング、ランチ、お茶、夕食からちょい飲み、場合によっては貸し切りによる宴会など、幅広く利用していただいています。ただ僕自身は19歳から岐阜を出てしまい、自分のお金で遊ぶようになってからは岐阜でほぼ生活をしていないため、実体験として喫茶店を複数利用するということはしていません。

中将:岐阜の喫茶文化は岐阜の方たちののんびりした気質が育んでいるんですね。
岐阜の魅力っていろいろあると思うんですが、太田さんのイチオシを教えてください。

太田:私の岐阜のイチオシは、夏の花火です。7月の最終週と8月の第1週の2回、開催され、どちらも3万発もの花火を上げるのですが、全国的には知名度が低いと思います。名古屋をふくめ近隣から人が集まるため、この日ばかりは、人だかりができます。岐阜の花火は長良川から打ち上げ、灰被りと言われるほどの近距離で観られます。山に囲まれているため、音の反響が体の振動として楽しめ、臨場感があります。ただ、2020年はオリンピックにより警備員不足になってしまったことが原因で中止になりました。この調子だと来年もないと思うので2022年に再開されることを期待しています。

産物では栗が有名で、和菓子では「すや」の栗きんとんはぜひ食べてほしい一品です。

中将:栗きんとんいいですね…。「すや」のホームページを見ましたがそば菓子も素朴な感じで気になりました。
太田さんが今後の岐阜に期待することはなんでしょうか。

太田:このままで居続けることでしょうか。特に発展を望むような種類の魅力ではない点が、岐阜が「目立たない」「地味」といわれる理由なのかもしれませんが。

   ◇   ◇

岐阜県の他の地方にお住まいの方がどう感じるかはわからないが、太田さんのお話を聞く限り、岐阜の方たちはPRや外部からの観光誘致にさほど積極的というわけではないようだ。しかし観光面で岐阜で人気があるのは取ってつけたようなキンキラキンの造形物ではなく白川郷や養老の滝など元々そこにあったものたち。派手な観光誘致施策がなされないからこそ、いかにもな観光地に飽きた「通」に愛される深みを保てているのかもしれない。

そして別の友人「おふじ」からは、岐阜市の歓楽街・柳ケ瀬に行ったという話を聞いた。「さびれて退廃的になったゾーンもあるけど、若者がお洒落な店を出して復興しているゾーンもあり、光と闇のコントラストが凄かった」ということだ。撮影した写真を見せてもらうと、非常にレトロかつ人間くさい風景にあふれていて、僕にはとても魅力的に思えた。

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