「京都はホラーを撮るにはうってつけ」 ドラマ「恐怖新聞」監督が語る、京都と寺と古典とホラー

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 毎週土曜日午後11時40分から放送されているドラマ「恐怖新聞」が10日夜の放送で最終話を迎えます。「恐怖新聞」は1970年代の大ヒット漫画を原作にしたドラマですが、今作では京都が舞台となっています。ホラーを京都で撮ることの意味や最終話の見どころなどを、メガホンを取った松竹撮影所の井上昌典監督(49)に聞きました。

 ≪「恐怖新聞」の原作は、つのだじろうさんの連載漫画です。ドラマ「恐怖新聞」は、「リング」や「仄(ほの)暗い水の底から」、さらには公開中の「事故物件 恐い間取り」といったホラーの名作で知られる中田秀夫監督ら3人がメガホンを取り、制作しています≫

 -このドラマは京都が舞台です。京都はホラーを撮るのに向いていますか?

 井上監督「京都はいにしえから続く千年の都です。京都市内には、心霊的な逸話や妖怪のエピソードゆかりの場所も多く、舞台としてはうってつけでした。さらに京都は、東京よりも市街地の近くに緑が多い。街がコンパクトなので、移動時間が短く、ロケしやすいというメリットもありました」

 -例えばどのようなところでロケされましたか?

 「第5話の最後で『あの世とこの世のはざま』のシーンが出てきます。草むらなんですが、実は大覚寺(京都市右京区)の境内なんです。スタジオのある松竹京都撮影所から自動車で10分ほどの場所です」

 「大覚寺の大沢池では、夏になるとハスの花が咲く。大沢池を遠景にし、手前に石仏や卒塔婆などを置くと、『あの世とこの世のはざま』のような感じが出せると思って撮りました。大覚寺のような場所は東京にはありません」

 -やはり京都の各地にはそういった「本物」の空気があるのでしょうか?

 「なるべくなら撮影場所のそのままで撮るべきと思っています。先ほどの『あの世とこの世のはざま』を撮影した場所は、お寺の境内というのもあって、過去に何かあったように思わせる空間になっているんです。こうした場所があるのは京都ならではだと思います」

 ≪ドラマ「恐怖新聞」は、京都市内の大学に通う女子大生で白石聖(しらいし・せい)さん演じる小野田詩弦(おのだ・しづる)が主人公の物語です。1人暮らしを始めた詩弦の元に「恐怖新聞」が届くようになり、そこには人が亡くなると予言されていました。しかも、恐怖新聞の記事に書かれたことは、必ず現実になっていきました≫

 -女子大生が主人公ですが、撮影時に気をつけられたことはありますか?

 「このドラマは、どこにでも普通にいる学生の元に、ある日『恐怖新聞』が舞い込み、学生の運命を翻弄(ほんろう)していくストーリーです。主人公は、どこにでもいる女の子を意識して撮影しました」

 「これは中田監督がおっしゃっていたのですが、『恐怖新聞』は後味を悪くしない、尾を引かないホラーとなっています。怖くなりすぎないようにしました。深夜ドラマですが、見た後に眠れないほど怖いという作品ではありません」

 -井上監督はこれまで時代劇を中心に撮られてきましたね?

 「今回の『恐怖新聞』が初の現代劇のホラー作品です。しかし『恐怖新聞』の第5回が主人公・詩弦の前世を描く回として時代劇でした。構成の乙一(おついち)さんのプロット(構想)で時代劇と知って本当に驚きました」

 ≪井上監督は最近では、2019年公開のシネマ歌舞伎「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」を監督。「女殺-」は江戸時代の近松門左衛門原作の文楽や歌舞伎の作品ですが、実在の殺人事件を元にした物語で、現代人でもスリルを味わえる古典の名作です≫

 -「女殺-」と今回の「恐怖新聞」で、なにか共通点はありましたか?

 「『女殺-』の主人公・河内屋与兵衛は本当にだめな人間です。道楽息子で親不孝、さらに金を借りに行った先で相手の女性を殺してしまう。しかし、『女殺-』は彼なりの理屈や理由があって、凶行に走らせたという物語になっています。彼が本当にどうしようもない男なら見向きもされない作品になってしまう。どこか彼の悲しさがあります」

 「『恐怖新聞』でも、主人公の母親や幼なじみ、恋人などが、当人なりに正しいと思って行動を起こすのですが、結果としてトラブルになってしまう。それぞれに背景や思いがあって、事件を引き起こすというのは似ていると言えるかもしれません」

 -最終回の見どころを教えてください。

 「一言で言うと、主人公・詩弦の運命やいかに、というところでしょうか。おそらく30分見ても結末は分からないと思います。ぜひ最後まで見てもらいたいです」

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 ドラマ「恐怖新聞」最終回は10日午後11時40分からフジテレビ系で放送されます。

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