母猫に育児放棄されたもなかちゃん。近所の人が見つけて保護したが、猫アレルギーのため飼うことはできず、里親を募集した。その頃、東京都に住む横山さんは、保護猫の里親になろうと本格的に譲渡サイトを閲覧し始めた。
育児放棄された野良猫の子猫
2020年5月末、母猫に育児放棄された子猫たちがいた。近所の人が見つけて保護したが、その人は重度の猫アレルギーだったので飼うことができず、自宅で保護し続けるのは難しく、里親を募集した。保護当時、生後1カ月くらいだった。食欲もあり、遊ぶのが大好きで、とても元気な子猫だった。
東京都に住む横山さんの実家では、横山さんが幼い頃からずっと猫を飼っていた。そのため、横山さんは実家を出た後も、いつかまた猫を飼いたいと思っていた。
「私の母が猫好きで、以前近所で野良猫の保護活動をしていたことがあり、実家で暮らしている猫も保護猫でしたので、自然と保護猫や保護活動団体の存在を知っていました。野良猫の殺処分の問題や命を粗末に扱う一部の悪質なブリーダーやペットショップのことも知ることとなり、猫をお迎えするなら絶対に保護猫をと心に決めていました」
飼うなら保護猫と決めていた
ちょうどコロナの感染が拡大してきた時期に、保護猫の譲渡会が開けず、救える命も救えないというニュースが報道された。ニュースを見た横山さんは、本腰を入れて猫を迎えようと思い、里親募集サイトをいくつか見た。その時、ぱっと目に留まったのが育児放棄された子猫だった。
「まんまるな瞳でこちらを見つめている写真に一目惚れしてしまい、この子がいい!と思いました。ビビッときたのです」
保護主に連絡すると、他にも譲渡希望の人が多くいたようだったが、5月末から6月中旬にかけてじっくりやりとりをして、正式譲渡してもらうことになった。
横山さんと保護主は、密を避けるため互いの家に出向くことはせず、保護主の最寄り駅の駅前で受け渡しをすることにした。生後4カ月くらい、子猫は里親サイトで見た写真より少し成長していたが、それでも片手で軽々と持ち上げられる大きさで、電車の音に少しビクビクしていた。
「改めて大切にしなきゃと思いました。帰りの車の中では、ずっとキャリーバッグの中でおとなしくしていて、あまり鳴かない子なのかな?という印象でした。でも、今はとてもよくおしゃべりするので、あの時は緊張していたのだと思います」
テレワーク用のPCの上でお昼寝
横山さんは、実家の猫たちが和菓子にちなんだ名前なので、その流れくんで夫と考え、もなかちゃんという名前にした。元々保護主が「ナナちゃん」という名前をつけていたので、「もなちゃん」と呼べば「ナナちゃん」と音が近くてなじみやすいとも思ったそうだ。
もなかちゃんは、最初の2日間くらいはなかなかごはんを食べず、横山さんは不安になった。しかし、手からあげてみると少しずつ食べてくれるようになった。トイレは初日から現在まで一度も失敗しなかった。
最初は家中のにおいを嗅ぎながら恐る恐る歩いていたが、あらかじめ買っておいたネズミのおもちゃが気に入ったようで、初日から楽しそうに遊んでいた。保護主が、もなかちゃんが使っていたおもちゃや爪とぎ、キャットタワーなどを譲ってくれたので、もなかちゃんも少し安心できたようだった。比較的すぐに懐き、在宅勤務中の夫のパソコンに堂々と寝転んでみたり、横山さんが料理をしているとキッチンカウンターに座って興味深そうにじーっと眺めていたり、気付くといつも近くにいる。
ペットではなく家族が増えた
もなかちゃんを迎えて4カ月経った頃、夫婦喧嘩の最中にもなちゃんが仲裁に入ってくれたことがある。口論が少しヒートアップしてきたところに、どこからかもなかがやってきて私たちの間に入り、ニャー!と一喝!いつもより少し大きめの鳴き声だったので、「あなたたちいい加減にしなさい!」と怒られたような気がしたそうだ。もなかちゃんのおかげで、この後すぐに喧嘩はおさまった。
「もなかを家族に迎えてから、家の中が明るくなりました。私たち夫婦は昨年引っ越してきたばかりなのですが、その頃、すぐにコロナが蔓延したので、新生活の慌ただしさや自由に外出できない閉塞感からぶつかり合うことが増えていたように思います。でも、もなかが家族に加わって、あっという間にもなか中心の生活に変わりました。それが不思議と全くストレスにならず、心がほっこりしたり、思いっきり笑わせてくれたり、今までにないほど日常を豊かにしてくれています」
横山さん夫婦が昼寝している時、気付いたらもなかちゃんがそばにきて眠っていたり、食事をしていると、そばで水を飲み始めたり、「ペット」ではなくて「家族」だと実感する瞬間がたくさんあるという。