埼玉県の秩父神社に1匹の子猫がいた。まだ産まれて間もないようだった。猫好きの若い男女に保護され、「猫の味方ネットワーク」が里親を募集。大阪から東京に転勤になったばかりの稲葉夫妻は、引っ越してから一週間経った頃、子猫に会いに行った。
神社で保護された子猫
2014年4月、若い男女が埼玉県の秩父神社で1匹の子猫を見つけた。秩父神社には、えさをもらって暮らしている数匹の野良猫がいるので、ここなら食いっぱぐれはないだろうと、誰かが捨てていったと思われた。
二人は、猫は好きだが、ペット不可の賃貸住宅に住んでいるので飼うことはできなかった。秩父神社でえさやりをしている人に相談した。
保護団体「猫の味方ネットワーク」に連絡があり、「せっかく見つけたのだから幸せにしてほしい」と、二人は子猫を託していったという。
子猫は、とても小さく、まだ排泄が自力でできないため介助が必要だった。ウェットフードを与えたが口にせず、母猫を探して一晩中鳴き続けた。翌日、ウェットフードを食べ、ボランティアが抱き上げると鳴き止み、世話をしてくれる人を母猫だと思ったようで、安心したように寝息を立てた。
転勤後、はやる気持ちを抑えきれず会いに行く
現在、東京に住む稲葉さんは、結婚した頃、大阪で暮らしていた。妻は祖父母が猫を飼っていたので、ずっと猫と暮らしていて、猫を飼いたいと言っていた。稲葉さんは、友人に譲渡サイトのことを教えてもらい、サイトを見た。職場にも保護猫を飼っている人がいて、「興味があるのなら、そういうところで探せばいい」と言われたという。
何匹か気に入った猫がいたが、みんな里親が決まっていた。2016年6月、東京に転勤になり、引っ越す直前に秩父神社で保護された子猫を見つけた。
「東京に引っ越して、一週間後に会いに行きました。妻のところに駆け寄ってきた子猫を見た時、この子にしようと即決しました」
名前は、長次郎くんにした。
思っていた以上に楽しい猫との暮らし
面会の翌日、長次郎くんは稲葉さんのところに来た。最初は箱の中などに隠れて怯えていた。
「夜になって布団に入ると、恨めしそうな顔をして見ていたので、『一緒に寝るか』と言うと、喉をゴロゴロ鳴らして喜んだんです」
稲葉さんは、猫を飼うと壁を傷だらけにされるのではないかと思ったが、そんなことはまったくなかった。表情やしぐさが人間のようで、会話が成り立つ。コミュニケーションが取れて面白いのだという。
長次郎くんは、ごはんがほしくなると器を引っ張ってくるし、ほこりを取るコロコロで身体を撫でてほしい時は、カバーを取って「やって」と待っているそうだ。布団をかまくらのようにしてもらって入るのも大好き。人が出かける時は、玄関まで来て見送ってくれる。