書店店長さんと小学生の女の子の“ちょっとイイ話”をご紹介します。
長年、地元の大型書店に勤務した太田原由明さんは9月24日、自ら主となる書店「HiBARI(ひばり) BOOKS&COFFEE」(静岡県静岡市)を開業しました。新刊書店にカフェとギャラリーを併設した独立系書店です。
開業準備中に女の子の声
本の品出しや陳列など、開業に向け準備に追われていた9月8日のこと。風を通すために入口ドアを開放し作業を続けていると、「あのー」と声がしました。見ると小学生の女の子が店内をのぞき込んでいます。
「あのー、『ちゃお』が欲しいんですが、入れておいてもらえますかぁ」
「ちゃお」とは、小学館が発行する月刊少女漫画誌。女の子に声を掛けられた太田原さんは「もちろん入れますとも!」。うれしさを店の公式ツイッターアカウントにも投稿しました。「予約入りました。うれしい」。
その後、女の子は?
ネット書店での事前予約が当たり前になった今、開業前の町の書店をのぞきこみ、店主に声を掛ける女の子の勇気には胸が熱くなります。さっそく代表の太田原さんに話を聞きました。
――開店前に「常連さん」がついたお気持ちは?
「うれしいです。これが町の本屋の醍醐味(だいごみ)だなぁと感じました。お客さまとの距離感が非常に近い。街中の大型書店にないものだと思います」
――女の子は開業前にひょっこりと?
「オープン前の準備作業中です。入口に開店予告のポスターを掲示していましたから、本屋ができること、オープン前であることは女の子もわかっていたと思います」
――勇気があるなと思いました。ひとりで?
「女の子はおひとりでした。10歳くらいだと思います」
――その後、女の子はお買い物に来られましたか?
「『ちゃお11月号』発売日だった昨日(10月2日)、午後に姉妹で来店され、ちゃおを買っていかれました」
――うれしいですね。今回の出来事は、今後の書店経営にも影響しそうですか?
「本屋が地域の中に必要だということを再認識させてくれました。書店はどんどん姿を消してきている現状ですが、生活の中に本と触れあえる場所があるということはとても大切なことだと思います。地域の皆さまに貢献できる本屋でありたいと考えています。今回18坪のちいさな本屋を開きましたが、お客さまのご期待は想像以上に大きく、それにちゃんと応えていくことが大切だと痛感しました」
女の子のひと言に、独立したばかりの経営者は決意を新たにしました。そんなこととはつゆ知らず、女の子はきっと今頃、連載の続きや付録の「キラツヤ☆もりもりネイルシール」にドキドキしているのかもしれません。そのままたくさんの本を読んで大きくなって欲しい…と思わずにはいられないエピソードでした。
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▽HiBARI(ひばり) BOOKS&COFFEE
住所:静岡県静岡市葵区鷹匠3-5-15 第一ふじのビル1F
営業時間:午前11時から午後8時
定休日:月曜日
https://hibari-books.com/