「虎杖」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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奈良市に「虎杖」という名字がある。「虎」の「杖」という字面からはどう読んでいいかわからないが、これは植物のことで「いたどり」と読む。イタドリはタデ科の多年草で、全国各地の山野や路傍に生えており、地域によっては「スカンポ」ともいわれる。若い茎はやや酸味をあって食用となり、筆者も子供の頃に路傍のイタドリを取って、皮を剥いでたべたことがある。
このイタドリの語源は、根を痛み止めの薬として用いることから、痛取=イタドリになったとされる。また、軽くて丈夫な茎が杖に使われ、茎の虎斑模様から中国では「虎杖(こじょう)」といわれたことから、イタドリに「虎杖」という漢字があてられた。
「虎杖」さんはこうした虎杖に由来する名字だが、なぜ虎杖を名字にしたかはよくわからない。なお、奈良市には「虎枝」と書く名字もある。戸籍に登録する際に「杖」ではなく「枝」という漢字を使ったのが理由だが、こちらもあえてそうしたのか、登録上のミスなのかは不明だ。