豊田真由子が解説、新型コロナの現状を総まとめ 世界は?日本は?私たちができること

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

Q.新型コロナウイルスには、一度感染しても、また感染するってほんと?

A.ウイルスには、①終生免疫を獲得できる(一度かかったら、基本的にはもうかからない。例えば、麻疹(はしか)、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)等)ものもありますが、一方で、一度感染しても繰り返し感染するものも、たくさんあります。季節性のインフルエンザや、(新型ではない)コロナウイルスが引き起こす風邪なども、そうです。

新型コロナウイルスについては、感染しても抗体ができにくい、あるいは数か月で消える、という報告もあります。今後も精緻な研究が必要ではありますが、一度感染して治っても、繰り返し感染する、そして、ワクチンを一度だけでなく、毎年接種する必要がある、といった可能性もあり、それは、ウイルスとしては、ごく普通のことです。

Q.ワクチン開発はどうなってるの?

A.WHOによると、9月21日現在で開発中の新型コロナのワクチン候補は187あり、うち38が治験段階、うち8が治験の最終段階である第三相にあるとされています。

先日、副反応が疑われたアストラゼネカ社のワクチンの治験中断と再開がニュースになりましたが、ワクチンは、科学的に安全性と有効性が確認されることが必須です。残念ながら、どのワクチンもある確率で、避けがたい副反応が生じてしまうことがあるわけですが、全体として考えたときに、生命と健康を守るワクチン接種が、むしろ害の方が大きいという事ではいけません。だからこそ、年月と費用をかけ、様々な段階を踏み、注意深く治験を行います。さらに、開発に成功しても、量産され広く行き渡らせ、先進国だけでなく途上国にも供給されないと、世界全体での収束は望めません。

よく、いつまでに何人分を確保、ということが話題になりますが、これは、あくまでも治験が予定通り進み、安全性と有効性が示された場合、という前提での話です。生命と健康に関わることですから、勇み足にならず、何事もエビデンスを基に考える姿勢が重要です。「正しくおそれて、正しく期待する」、新興感染症と向き合うに当たっては、これが肝要だと思います。

新型コロナウイルスのワクチンを国際的に共同購入する枠組みである「COVAXファシリティー」に、日本やEU諸国を含む計156カ国・地域が参加を正式に決めました(9月21日時点)。これは、世界人口の64%にあたり、さらに38カ国が近く参加することを期待しています。ただし、米国やロシア、中国は参加していません。

「COVAXファシリティー」は、WHOやワクチン普及に取り組む国際機関などが参加を呼びかけ、開発中の複数のワクチン候補に投資し、実用化に成功すれば参加国の間で公平に分配して、医療従事者などから接種を進める仕組みです。2021年末までに20億回分のワクチンを確保する目標を立てています。

この枠組みには、資金力のある先進国が自国向けにワクチンを買い占め、多くの国が手に入らなくなる事態を避ける目的があります。先進国にとっても、多数のワクチン候補の中から成功したワクチンを確保できるメリットがありますが、日本を含め多くの先進国は、この枠組み以外にも製薬企業と交渉し、独自の調達を進めています。

今後、参加国のうち64の高所得国はワクチン開発等のための資金を前払いし、残りの92の低所得国は、援助国からの拠出金でワクチン調達の支援を受けることになります。出資国は人口の2割分のワクチンを確保できます。日本は172億円を拠出し、約2500万人分のワクチンを購入する権利を得られるとしています。

Q.最後に一言

A.様々な情報が溢れ、ご高齢の方や持病をお持ちの方、ご家族の方等は、特にご不安でいらっしゃると思います。若い方でも、深刻な後遺症が出るケースが報告されています。

また、一方で、通院や健康診断等を控えていることで、疾病が悪化したり、高齢者の方が自宅に籠ることで、心身の状態が悪化したりするケース等も、報告されています。「最新の正確な情報を基に、正しくおそれて、正しく期待する。社会全体とともに、個々の状況を見極めて、前向きに“日常”を送るようにする」

がんばってまいりましょう。

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