新型コロナ、かかったらこうなる-体験を漫画化 「ただの風邪と思ったら絶対後悔する」

辻 智也 辻 智也

  新型コロナウイルスに感染した京都府内の男性の実体験を描いた漫画と動画「あんくんの新型コロナ奮闘記」が、インターネット上で9月から公開されている。「コロナの実像を伝えたい」という男性の思いに応え、漫画家として活躍する友人らが制作した。今も息苦しさなどの後遺症が残る男性は「漫画を通し、少しでもコロナの怖さや日常への影響に気づいてほしい」と話す。

 男性は、手話通訳業の宮原二三弥さん(30)=京都府京田辺市。8月4日に39度の発熱があり、5日に医療機関を受診。6日にPCR検査で陽性が判明した。宮原さんは1日に大阪府内で陽性者と接触していたという。

 聴覚障害のある妊娠中の妻を自宅に残し、入院した。入院後は、倦怠感やせき、下痢などに加え、夜は眠れないほどの呼吸困難になったり、塩味を腐った味に感じる味覚異常が出たりした。「毎日症状は違い、ある時はジャブ、別の時はボディーブローをくらう感じ」だったという。

 また、高熱の中、感染後に接触した28人に連絡し、その個人情報を保健所に報告する作業を強いられた。「いちいち連絡してくるな。濃厚接触者になって仕事ができなくなった」などとつらい言葉を返されることもあった。

 入院は8月18日まで続いた。宮原さんは「流行が続く中、実際にコロナにかかった患者の現状を伝えたい」と考え、ツイッターやフェイスブックなどSNSで症状や治療の状況、気持ちなどを克明に記し、発信し続けた。

 9月上旬、PCR検査で陰性だった宮原さんの妻が無事出産した。しかし、宮原さん自身は呼吸の苦しさや肺の痛みなどの後遺症が今も続いている。

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 そんな宮原さんの思いに応えようと、友人ら4人が、体験記を発信するチームを結成した。文章ではなく、視覚的に分かりやすくするため、漫画と動画を使うことにした。

 漫画を担当したのは、京都新聞ジュニアタイムスの漫画「京・妖怪絵巻」の作者、青柳恵太さん(28)=兵庫県明石市。京都精華大マンガ学部出身で、手話通訳関連の団体職員の傍ら、行政広報などの漫画作品を手がけてきた。

 宮原さんのSNSを元に、約1週間で8ページ分を描き上げた。作品は、妊娠中の妻がいても陽性判明まで入院できないことや、保健所とのやり取りなどが描かれ、感染時の備えになる情報が盛り込まれている。

 動画編集やネット配信の方法なども別の知人が担い、9月4日に漫画を公開し、漫画に宮原さん本人によるナレーションと手話を加えた動画も11日に公開した。

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 宮原さんは「マンガや動画でとても分かりやすい伝え方ができてうれしい。『コロナはただの風邪』と思っていたら絶対後悔するので、ぜひ目を通してほしい」と願う。

 漫画を担当した青柳さんは、小学生の頃にコロコロコミックを読んで漫画家に憧れ、少年ジャンプの連載を目指していたが、夢半ばで挫折した経験がある。「さまざまな人生経験や思いを持つ一人一人を主人公にした漫画を世に出していきたいと思っていたので、今回は一番やりたかったことができた。貴重なコロナ体験を知ってもらえたら」と話す。

 漫画と動画は4部構成で、9月22日現在、公開されているのは漫画が第1部と第2部、動画が第1部のみ。今後は隔週で金曜日に続編が公開される予定。ともに「あんくんの新型コロナ奮闘記」で検索すると無料で閲覧できる。

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