車を運転する人は必ずお世話になるガソリンスタンド。セルフサービスのスタンドが増えつつあるが、無人ではなく、少数のスタッフは常駐する。人が働いていれば、やはり業界ならではの用語が存在するもの。ガソリンスタンドのスタッフどうしで交わされる用語について、元店長のCさんに教えていただいた。
「ガソリンスタンド」は和製英語
ガソリンスタンドまたは給油所とは、自動車やバイクの燃料であるガソリンと軽油のほか灯油など、燃料を販売する施設を指す。その「ガソリンスタンド」という呼び方が、じつは和製英語だという。
「たとえばアメリカへ行って『Gasoline stand』といっても通じません。あっちでは『Filling station』とか『Gas station』といいます」
ちなみに日本の元売り会社や経済産業省では「サービスステーション」と呼び、「SS」と略されるというからややこしい。
「ガソリンと軽油はどう違うの?」という超初歩的なギモン
「大事なことですけど、よく分かってない人が多いみたいです」
一般的な乗用車の多くは、ガソリンエンジンを搭載している。だから給油の際は「ハイオク」と「レギュラー」を区別すればいいだけ。もし間違えて給油しても、2000年以降に製造されたエンジンは制御プログラムがはたらいて、自動でそれぞれに応じた設定になるそうだ。
燃焼は自動的に制御されるが、ハイオク仕様のエンジンに、間違ってレギュラーを入れたら、パワーが落ちたり燃費が悪くなったりする。そして、ハイオク仕様なのに一定期間つづけてレギュラーを使うと、点火プラグが煤にまみれて洗浄が必要になることがある。
「逆に、ふだんレギュラーを入れている車に、ハイオクを入れたら困ったことになります。ハイオクは値段が高いですから、余計な出費になります(笑)」
レギュラーとハイオクを間違えても、エンジンにほとんど影響しないことは分かった。だが、メーカー指定のガソリンを使わなかったことで、保証の対象外になってしまう場合があるから注意したほうがいい。
一方、軽油はディーゼルエンジンの燃料だ。トラックやバスなど、大型でパワーを必要とする車の多くはディーゼルエンジンを搭載している。
ところがガソリンエンジンのトラックもあるし、ディーゼルエンジンの乗用車もあるから、これもまたややこしい。
セルフのスタンドが増えてから、ガソリンと軽油を間違えて給油してしまうトラブルが多いという。
「自分が運転している車の燃料が、ガソリンか軽油か、気にしないで乗っていた人が多かったってことでしょうね」
一時「“軽”自動車だから“軽”油を入れちゃった」というミスが増えていると報じられたことがある。
「そういうミスは、じつは多くなかったみたいです。まったく無いわけじゃないですけど(笑)」
フルサービスのスタンドでも店員が間違える事例もあるというから、人がやる以上、ミスはどうしても避けられないようだ。
ガソリンの「ハイオク」「レギュラー」って何の区分?
「専門的に説明したら長くなりますけど、簡単にいうとノッキングの起こりにくさを示す数値です。数字が大きいほどノッキングを起こしにくくなります」
ノッキングとは、エンジン内で起こる異常燃焼のこと。分かりやすい現象としては、加速が鈍くなる。
純粋なガソリンは自然発火しやすく、そのままだとノッキングを起こして使いづらい。だから、ノッキングを起しにくくする添加物を加える。この添加物が多いと、オクタン価が高いということになる。
日本工業規格(JIS)では、オクタン価96以上のガソリンを「ハイオクタン」、89以上を「レギュラー」と区分している。
「ガチャマン」「ケイコウカン」「TBA」は現場でよく使う?
最後に、細かい用語を3つご紹介しておこう。
「聞き間違えやすいかもしれませんが、火をつけるチャッカマンじゃなく『ガチャマン』とは、ノズルを給油口に差し込んだままにしておいても、上がってきた油面をセンサーが感知して勝手に給油が止まる。このとき『ガチャッ』って音が鳴るんです」
満タンになったら「ガチャッ」と音がして給油が止まるから、「ガチャ」+「マンタン」で「ガチャマン」というわけ。
ガチャッと鳴るまで給油する「入れ方」の意味でも使われ、店員にオーダーする際「ガチャマンまで」といえば分かってくれる。
「ケイコウカンは、よく聞くと思います。漢字で『携行缶』と書いたら分かるかも」
燃料を入れて持ち運ぶ(携行する)ための容器(缶)で「携行缶」だ。ガソリンのほか軽油や灯油を運ぶのにも使われ、一般的な容量は20リットル。スタンドの店員は、コツをつかんだら4ついっぺんに持ち運べるようになるという。
「TBAは、スタンドで扱う販売品目の頭文字です」
Tはタイヤ、Bはバッテリー、Aはアクセサリーのこと。これらをひっくるめて「TBA」と呼んでいたそうだ。