ACジャパンの新CMが優しそうに聞こえても「犯罪者のセリフ」と話題 日本動物愛護協会に聞いた

「にゃんぱく宣言」に続く第2弾

金井 かおる 金井 かおる

 動物愛護思想の普及啓発と愛護活動の推進する「日本動物愛護協会」(東京都港区)の新CM「犯罪者のセリフ」が話題です。

 ストーリーの一部を紹介します。

 母親:「夫の転勤が急に決まった。赴任先の社宅はペットNG。いろいろがんばってみたけれど、どうにもならなくて、この子を捨てる決断をした」

 母親:「ごめんね。ごめんね。どうか、どうか、親切な人に見つけてもらってね」

 ナレーション:「優しそうに聞こえても、これは、犯罪者のセリフです。どんな理由があろうと、どんなに心を痛めようと、動物を捨てること、虐待することは犯罪です」

 イラストや歌のやさしい印象と、犯罪者というパンチのある言葉とのギャップに、親子の行動の残酷さがより浮き彫りになります。ツイッターやフェイスブック、インスタグラムにはポスターの画像が次々と投稿され、中には31万いいねを集めるツイートもあるほどです。

「犯罪者のセリフ」の理由

 2020年7月1日からスタートした同CMは、ACジャパンによる支援キャンペーンの第2弾。2021年6月末までの1年間、テレビやラジオ、ポスターなどで展開されます。

 日本動物愛護協会常任理事で事務局長を務める廣瀬章宏さんに話を聞きました。

 ――「犯罪者のセリフ」というインパクトの強さに驚きました。

 「以前より愛護動物の遺棄・虐待は動物愛護管理法にうたわれている犯罪行為であるにもかかわらず、軽く考えられがちなのではないか、と考えていました。飼えなくなったからと言って簡単に捨てたり、軽い気持ちで虐待動画をSNSにあげたり、飼い主がお世話を怠ったり、このような状況下に置かれた苦しんでいる動物たちを救うためには、動物の遺棄・虐待が立派な犯罪行為にあたるということを世の中に伝え、知ってもらい、抑止することだと思いました」

 「CMについては、広く一般の皆さまにも見てもらわなければ意味がありません。動物の遺棄・虐待を重くて恐ろしく表現することは簡単ですが、CM自体を見たくないということに繋がってしまいます。そこで、柔らかで優しいイラストと歌で、流れていく中に強い主張を込めた作品としました。画面上は遺棄のことで物語が進んでいきますが、遺棄だけのことをではなく、虐待についても伝えたかったので、テロップでこの6月から施行された動物愛護管理法の遺棄・虐待の新しい罰則を入れています」

 ――広告を見た人たちから反応は?

 「『やっと動物愛護のCMが、メディアの力を借りて、犯罪だと言う認識が周知されて幸せな犬や猫が増えますように』『良いCMだと思う』『親切な人に出会える確率は低い。誰かが育ててくれると思ったら大間違い。捨てること自体が犯罪、はっきり言ってくれて良い』『ショッキングなCMだけど本当にその通り』『殺処分寸前の犬を保護した。もちろん最後まで看取りました。このCMを見るとその犬を思い出す』『優しすぎる。もっと強い表現でも良かったのでは』など、多くのご意見をいただいております」

飼えなくなった動物の引き取り先は…

 ――CM内にもあるような、転勤などでペットNGの環境に移るとき、どこに相談するのがベストなのでしょうか。ペットにとっての理想の形は?

 「飼えなくなった動物の引き取り先を見つけるのは、簡単ではありません。また簡単に引き取ってくれるような機関や団体などありません。飼い主は命を預かっているという責任において、率先して次の飼い主を探すために動かなければ、誰も関わってはくれません」

 「個々の事情はあると思いますが、命の問題です。努力を惜しまず、親族、友人、知人に声をかけたり、お住まいの地域の動物愛護相談センター、最寄りの動物愛護団体に問い合わせをしたり、動物病院などに新たな飼い主を募るチラシを貼らせてもらったりする手立てはあります」

 「動物を家族に迎える際には、もしもの時のために受け皿を考えておく、ということも飼い主には必要です。しかし、いずれにしても、動物たちにとって飼い主が変わるということは大変つらいことです。もし、飼えなくなる可能性があるのであれば、飼わないことも愛情です」

さだまさしさん自身がアレンジ「にゃんぱく宣言」

 第1弾CM「にゃんぱく宣言」(2019年7月から2020年6月末)をおさらいします。

 CM曲は、歌手さだまさしさんの名曲「関白宣言」をさださん自身がアレンジし、歌も担当。「俺の体 俺より管理しろ」「家の外に出してはいけない」「飼えない数を飼ってはいけない」など、猫ちゃん目線の替え歌は「一度聴いたら耳から離れない」と話題になりました。

 「猫を好きな人、嫌いな人、多くの方から賛同のお声をいただきました。また飼い猫を家の外に出してはいけないというフレーズに対して、『猫は自由な生き物で、家と外を自由に行き来するのは当たり前だ』とのご意見もあり、まだまだ室内飼いが浸透していないと実感しました」(廣瀬さん)。

6月からは罰則強化

 動物愛護管理法は2020年6月1日から罰則が強化されています。遺棄・虐待の新しい罰則は以下の通りです(環境省ホームページより引用)。

・愛護動物をみだりに殺したり傷つけた者→5年以下の懲役または500万円以下の罰金

・愛護動物に対し、みだりに身体に外傷を生ずるおそれのある暴行を加える、またはそのおそれのある行為をさせる、えさや水を与えずに酷使する等により衰弱させるなど虐待を行った者→1年以下の懲役または100万円以下の罰金

・愛護動物を遺棄した者→1年以下の懲役または100万円以下の罰金

愛護動物とは
1.牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
2.その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

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