餓死寸前、多頭飼育崩壊の家から救われた子猫…人間のことを信じられるようになるまで

黒川 裕生 黒川 裕生

 毎月2回、保護猫の譲渡会を続けている神戸のボランティア団体「猫のミーナ」は、さまざまな事情を背負った猫を飼育しています。代表の松井美枝さんの自宅には今、多頭飼育崩壊の家から救い出された生後2カ月ほどの雌の子猫がいます。引き取った当初は衰弱して立つこともままならなかった子猫ですが、松井さんの献身的な世話のおかげで、すっかり元気に回復。人懐こい一面を見せるようになりました。

 「もう面倒を見られない。助けてほしい」

 独り暮らしの高齢男性からのSOSで、駆けつけた松井さんが目撃したのは、ガリガリに痩せた猫たちの姿。成猫20~30匹の中に、生後間もない子猫が12匹いました。

 残念ながら2匹は既に餓死しており、残り10匹も背骨が浮き出て見えるほど痩せて衰弱。どの子も全身から糞尿のきつい臭いを放ち、横になったまま起き上がることもできないような状態でした。目は目やにで塞がれていたといいます。「成猫たちもみんな痩せこけていたので、お乳をやろうにも出なかったのかもしれません」と松井さんは想像します。

 松井さんはひとまずその10匹を2~3匹ずつ仲間に引き取ってもらいましたが、1匹だけ、非常に警戒心の強い子が残りました。人に慣れるまで相当な手間と時間がかかることが予想されたため、松井さんが責任を持って引き取ることに。辛抱強い世話が始まりました。

 連れ帰った自宅で「シャー、シャー」と警戒心をむき出しにする子猫に、松井さんは一対一で向き合います。家には他にも何匹か保護猫がいますが、松井さんはその子を胸に抱いてごはんをやり、「人間は怖くない」ということを少しずつ理解してもらいました。何日か経つと子猫にも体力が戻り、大人の猫について歩いたりもできるように。警戒心も少しずつ薄れ、松井さんや家族にも懐くようになりました。お気に入りの場所はキャットハウスの中ですが、おもちゃの猫じゃらしで遊んでもらうのも大好き。まだ少し痩せてはいるものの、毎日愛くるしい姿を見せてくれています。

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