虎ノ門駅のホームに出現した浮き上がる「虎の面」と少女!その正体とは?東京メトロに聞いた

北村 泰介 北村 泰介

 東京メトロ銀座線・虎ノ門駅の渋谷方面ホームに、12人の少女が虎の面と戯れる姿を描いたレリーフが8月1日から設置され、SNSで話題になっている。

 ホームの背後に幅1メートルほどの板が計9枚並び、そこで独特の世界が展開される。少女の全身と虎の面は肉眼で見ると凹(へこ)んだ窪みに彫られているのだが、スマホなどのカメラ越しに見ると、虎の顔が「3D」のごとく、鼻と口元のふくらみも含めて立体的に浮かび上がってくる。2次元なのに3次元のリアル。フィルムのネガのような色彩で、上下左右と角度を変えると少しずつその表情を変えつつ、虎の目はこちらを凝視している。

 これは凹型レリーフによる「錯視」という。同作を紹介したツイートには6万件近い「イイね!」が付くなど反響も大きかった。

 「何度か見ていたら虎が瞬きしたような…」「子どもの時に見なくて良かった。絶対寝られへん」「引き込まれて戻って来れなくなるような…」といった感想や、反対側の浅草方面行きのホームに停車中、車両の窓から作品を見つけて降り、対面ホームに移動して作品に見入ったという人も。それだけ、人を引き付ける力があるということだ。

 一方で、「虎ノ門で、虎の面」というダジャレも…。実際のところはどうなのだろう。東京メトロの広報担当者は当サイトの取材に対して「銀座線リニューアル工事における虎ノ門駅のデザインコンセプトが『虎が見守るビジネス街』となります。そのコンセプトにあった作品を協賛企業様に選出いただいた形となります」と説明した。

 同作品の作者は彫刻家・中谷ミチコさんで、タイトルは「白い虎が見ている」。虎ノ門の地名の由来とされる「白虎」をモチーフとし、再開発事業に伴う虎ノ門駅のプラットホーム拡幅などと共に誕生したパブリックアートとなる。

 担当者は「これまでにも、南北線や副都心線などでパブリックアートを設置しております。 現在、リニューアルを進めている銀座線各駅においても、駅リニューアルと共にパブリックアートを設置しております」と解説し、今回の反響については「SNS 等で取上げていただいていることについて大変うれしく思っております」と手ごたえをつかむ。

 地下鉄の駅ホームという日常の世界に突如、登場する非日常の世界。その在り方について、東京メトロの担当者は「弊社では、ゆとりと潤いのある文化的空間の創造を目的に、駅の新設やリニューアルに合わせてパブリックアートの設置を推進しております。今後も設置を進めてまいります」という。

 新型コロナウイルスの感染拡大と酷暑に見舞われた2020年夏の東京。その都心に出現した虎と少女たちのパブリックアートが、苛烈な現実をひと時でも忘れさせてくれた。

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