大学でボランティアグループを立ち上げた神戸の男子学生が、子供向けのイベントを積極的に開催し、地域で一目置かれる存在になっている。中学のときに実業家稲盛和夫氏の本を読んで感銘を受けて以来、起業を目標にしてきたという20歳。「今は学生という立場を最大限利用して実績を積み、将来的にはボランティアを『仕事』にしたい」としたたかな夢を描く。
甲南大2年の宮内輝(ひかる)さん。高校では生徒会活動に携わるなど「リーダー」になるための努力を続け、大学入学後はボランティアサークル「palafool(パラフル)」を創設。現在、同大や近隣大学の学生ら計約80人が所属しており、今年8月にはNPO法人の認証も取得した。
パラフルの主な活動は、遊びなどのイベントを通じて、子供たちの居場所をつくること。これまで勉強会や料理、魚釣り、スポーツ大会などを企画して、多くの子供たちを楽しませてきたという。当初は無償でイベントを開く学生たちの真意を図りかね、不審がられることもあったが、活動の様子を保護者に毎回きちんと長文のメールで伝えたりしながら、少しずつ信頼関係を築いてきたそうだ。子供向けだけでなく、犬の散歩を代行したり、高齢者宅の掃除を請け負ったりもしている。
活動場所は、パラフルが拠点とする神戸市灘区や東灘区の商店街を中心に、1軒1軒チャイムを鳴らしすなどして、協力者を探した。「もちろん無視されたり、冷たくされることもありました。でもへこたれずに続けていたら、賛同して助けてくれる人が必ず見つかるんです」と宮内さん。運営面でも、子供の健全育成と地域活性化という理念に共鳴してスポンサーを申し出る人や、余った食材を提供してくれる店が現れたほか、SNSなどで活動を活動を知った遠方の人から、子供たちのために漫画「ONE PIECE」の全巻セットが送られてきたこともあったという。
パラフルには今、大きな目標がふたつある。ひとつは子供たちがいつでも自由に食事や寝泊まりできる「みんなの家」をつくること、もうひとつは屋台の飲食物などを全て無料で提供するイベント「0円祭り」を開催することだ。
宮内さんは「金銭的な利益は発生しないけど、1年ちょっとやってきて『ボランティアで事業を持続させることはできる』という確信を持っている。“綺麗事”だけで食べていける仕組みをつくり、より良い社会を実現できるよう頑張りたい」と話す。
不動産業を営んでいる父を「尊敬している」という宮内さん。「朝から晩まで休まず働いている父に負けたくない」と、毎朝地元の商店街を掃除したり、地域のラジオ体操に参加したりと、毎日全開で走り続けている。たぶん今日も。
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