15歳少年の女性刺殺事件…女児の命救った消防局職員の判断がさらなる大惨事防ぐ

小川 泰平 小川 泰平
20代女性が刺される事件があった「マークイズ福岡ももち」=29日、福岡市中央区(提供・共同通信社)
20代女性が刺される事件があった「マークイズ福岡ももち」=29日、福岡市中央区(提供・共同通信社)

 福岡市内の商業施設で、住所不定の男子中学生(15)が同市在住の女性客(21)を刺殺した事件を受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は2日、当サイトの取材に対し、女性を刺した後も包丁を持って歩く少年を尾行し、6歳の女児に馬乗りになって包丁を突きつけた少年の後方から飛びかかって救出した福岡市消防局の30代男性職員について「冷静で的確な判断によって複数の死傷者が出ていたかもしれない大惨事を防いだ」と勇気ある行動を称えた。

 8月28日夜、福岡市内にある商業施設の女子トイレで女性が血を流して倒れているのを警備員が発見し、まもなく死亡が確認された。その後、銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された少年が持っていた刃渡り18・5センチの包丁に付着していた血液と、女性の血液のDNA型が一致。少年は「女性を刺した」という趣旨の供述をした。女性は首など上半身を中心に致命的な傷を複数負っており、福岡県警では、女子トイレ内で少年が女性を突然包丁で襲ったとみて捜査している。

 少年は女性を刺した後、血の付いた包丁を持って施設内を歩いていた。消防局職員は客の叫び声や警備員の「逃げて」という声を聞いて、周囲を見渡しながら歩く少年の存在に気づき、次に襲う相手を探していると判断して後をつけた。

 少年が急に走り出し、女児に馬乗りになって右手の包丁で切りかかろうとした際、背後から飛びかかって包丁を持つ少年の右手を握り、左腕で少年の首に手を回して倒れ込んだことで、女児は無事で、少年の逮捕につながった。少年は娘を助けようとした母親(39)にも包丁を向けて脅した疑いがあり、県警は30日、暴力行為等処罰法違反容疑を加えて少年を送検した。

 小川氏は「今回の事件で、あまり大きく報じられていませんが、私はこの消防局職員の行動に注目しています。もちろん、女性1人が亡くなったことで大惨事になりましたが、さらに複数の人が無差別に殺害されていた可能性もあっただけに、冷静で的確な行動がさらなる大惨事を防いだことになります」と指摘した。

 同氏は「勤務中の警察官であれば警棒や拳銃を持っているが、買い物に来ていた非番の消防局職員ということで、そのような道具はないにもかかわらず、女児に馬乗りになった少年の背後から左手で相手の首をスリーパーホールドで締めながら相手の動きを制圧、右手で包丁を落した。素晴らしい判断と行動で犯人の身柄を押えた。さらに被害者が出ていたところを未然に防いだ」と称賛した。

 防犯カメラに女性の後を追って女子トイレに向かう姿が写っていた少年は逮捕当初、「わいせつ目的で女性に近づいた」という趣旨の供述をしていたが、小川氏は「それならば人目のない場所を選ぶところ。わいせつ目的のためだけで、金曜夜で人の多い大型商業施設を狙って行くでしょうか?その供述は、うのみにはできない」と指摘した。

 少年は西日本にある少年院を8月26日に仮退院して福岡県内の更生保護施設に移ったが、翌日失踪し、行方不明者届が出されていた。

 少年は施設から失踪後に「善意の人から3000円もらって、バスで移動した」と供述し、包丁は現場の商業施設で万引きしていたことから、小川氏は「そうやって凶器を準備をしているので、突発的な犯行とは思えない。それなりの理由、計画性があったと考えられる。今後、動機について慎重な取り調べが必要になる」と捜査の行方を見据え、「最後になりましたが、お亡くなりになられた21歳の女性のご冥福を心からお祈りいたします」と悼んだ。

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