歴史的発見!!能登の古民家から80年前?のセメダインC…公式も大興奮「社にも史料残ってない」

広畑 千春 広畑 千春

 「古民家の収納から古いセメダインCが発掘されました」

 先月末、ある男性が、そんなツイートをつぶやきました。

 金属の蓋に、鮮明に読み取れる説明書の文章はカタカナで「新發賣」など旧字体表記。さらに「¥.30(30銭)¥.50(50銭)」という販売価格―。

 程なくセメダイン公式から「すごい・・・!!おそらくなのですが、弊社にも史料が残っていない発売当初(1938年頃)のものだと思われます。大変貴重な情報をありがとうございます。周りの社員も驚いております!!!」と興奮したコメントが届き、その後も覚めやらず「めっちゃくちゃ貴重なセメダイン『C』が発掘されました。(中略)戦前の『C』です。セメダインにも史料残ってません…!」「本当にすごい…まだ『C號』って書いてある時期のだ…」と連続ツイート。

 1.1万以上のいいねを集め、ユーザーらからは「戦前は文字が右から左に書くのでは」「いや英語と日本語が交ざる場合は左から右もあった」「戦中は敵性用語で『C』は使えなかった?」などの情報も寄せられ、大盛り上がりになりました。

 セメダイン広報室は「社史によると30銭、50銭というのは約80年前の発売当初の販売価格。まだ確定してはいませんが、おそらくその当時の物ではと考えています」とし、「これだけ年数が経っているのに、現物だけでなく説明書までそろっていて、かつこれだけ綺麗に残っているなんて本当に素晴らしい。当時はフタも金属製だったようですね。弊社に残る最も古い商品の画像は1960年代のものですから、間違いなく歴史的な発見です!!」と驚きを隠しません。

 発見したぴんぽいんとさん(@pinpoint_m)ことMasaki Satoさんにお聞きしました。

―どんな形で見つかったのですか?

「この家は、2017年に売り情報を見て購入した、築80年ほどとみられる古民家なんですが、仏壇脇の収納を片付けていた際に、古新聞・古雑誌に紛れて古い蚊取り線香の箱の中に説明書と一緒に入っていました。説明書はかつてない新商品だったので使い方を忘れぬよう保管していた感じでしたが、その後は買ったまま、もしくは1回使ったっきりで、すっかり忘れ去られているような印象でした。直感で、貴重なモノが出て来たなと思いましたね」

―保存状態もものすごく良いですね。

「はい。未使用かそれに近い状態で、外観の程度も良好で蓋もついている。説明書も付属していて読めました。それにしてもロングセラーだな、と思い、その場でスマホを取り出してネットで歴史を調べたところ、素晴らしい記事があり、私の親が生まれるよりも前から、セメダイン社はひとつの理念に基づいてモノづくりに励んでいるのだと知りました。そしてその記事中に出ているセメダインCの現物よりも古いと確信が持てたので、存在に気付いて頂けたら…と思っていたところ、公式ツイッターが『発掘』に絡むツイートをされていたのでリプライに『古民家からセメダインCが発掘されました』とつぶやいたのです」

―公式からも驚きのリプライが寄せられましたね。

「嬉しかったです。もともとお譲りする前提でご連絡を差し上げたのですが広報の方にも真摯に丁寧に対応していただきました。周りの方の反応や期待も想像以上で、セメダインさんファンの熱量を目の当たりにできたのも楽しかったですね」

―同社に寄贈されるご予定とか。

「はい。この家では戦前の物は珍しくはないのですが、価値の保存ができる場所にお譲りできるならこれほど嬉しいことはありません。セメダインさんは、企業としてモノづくりに励みながらも、多くの方々のモノづくりをサポートする商品を開発されています。私もユーザーとしてお世話になっていますので、光栄に思っています。この古民家では民泊を始めたんですが、それをツイートしてくれたことも嬉しかったです。セメダインさん、どうもありがとうございました。古民家の楽しみ方に、金銭には代えがたい体験を得られることを知りました!」 

 と話してくれました。実は、石川県志賀町の赤崎地区にあるこの古民家、元は地域の地主のお家で土地は200坪、家は300平米で11LDKに、蔵が2つ、倉庫が1つ、庭が3つ、ふすまなどの内装には輪島塗が使われている―と、かなりの大豪邸。「以前から海沿いの古民家で暮らしてみたかった」というSatoさんは「理想的な建物と環境に出会えた」とほれ込み、家族の大反対を押し切って購入しました。

 「この漁村は北前船の寄港地からも近く、昭和の初期には遠洋漁業で財を成した地域でした。1938(昭和13)年3月に火事がありましたが、裕福だったので集落の多くが一斉に建て替えられました。ただ、子どもが都会に出て戻らなかったため、その後、建て替えられることもなく、築80年ほどの豪勢な家と古い街並みが当時のままに残り、まるでタイムスリップしたかのような不思議な町並みが残っています」とSatoさん。この古民家も30年以上放置され買い手がいなければ解体する予定と聞き、「何とか維持したい」と購入を前提に下見へ。そこで「通りに豪勢な家が整然と並び、ヨーロッパの街並みにも引けをとらない美しさ。敷地の裏手が海、路地には緑が溢れ、起伏に富んだ美しい地形に心を奪われました。車が入れない細い小路を歩いて坂を登れば、抜けた空、黒光りする瓦屋根が密集した家、海の青。色の境界がくっきりと映り、この景色を形づくる一員になりたいと思った」と話します。

 生活基盤自体は東京にあったため、管理人を頼み、時間が空くと能登を訪れる―という月日を過ごしながら、改修を進め、今夏には民泊としてスタートできる状況が整ったものの、コロナ禍で「開店休業状態」といいます。

 「ここは海沿いですがビーチは小さいですし、サラサラした砂質でもありません。でも徒歩圏内だけでもビーチ、磯、防波堤、消波ブロックなど環境の多様性があります。シュノーケルを付けて潜れば環境ごとに棲んでいる魚の種類も地形もわかります。子どもが磯遊びをしたり、昼に潜って地形と魚種を把握して、夕方に釣り糸を垂らすような遊びも。子供たちにも都会とはまったく異なる時間の過ごし方ができます」とSatoさん。今は住民らと一緒に、高齢化し過疎化した集落の再生も目指しているといい、「赤崎の魅力に気付いてもらえたら」と話してくれました。

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