注目の東京産チョコはカカオベルトに近い小笠原諸島の母島で生まれた…フルーティーな味が特徴

北村 泰介 北村 泰介

 東京でチョコレートが作れるってご存知でした?東京産のカカオを使った「メイド・イン・トーキョー」のチョコレートとして昨年初商品化され、その新作となる「TOKYO CACAO 2020」が8月から販売を開始した。「東京でカカオ豆が採れるの?」と驚かれるが、実は、小笠原諸島(東京都小笠原村)でのこと。東京都特別区(23区)の南南東約1000キロの太平洋上にある30以上の島からなる地域だ。そのうちの母島で独自にカカオ豆を栽培して「東京発のチョコレート」を生産している平塚製菓にその取り組みを聞いた。

 同社は1901(明治 34)年に京都で創業され、31(昭和6)年に東京に移り、戦後の48年にチョコレート会社設立。61年に埼玉県草加市に移転した。史上初の「東京産チョコレート」を目指して小笠原村の母島で 2003 年からカカオの栽培計画「東京カカオプロジェクト」を進め、昨年、初めて商品化に成功。今年は「昨年よりもフルーティーな味わい」という新商品を発売する。

 そもそも、なぜ「東京産のチョコ」にこだわったのか。03年に同社代表の平塚正幸氏がガーナでカカオ農園を見学し、「カカオの木をより自分の身近な所で育てたい」と考えたのがプロジェクトのきっかけだった。担当者は「国内で栽培地の候補を探している中で、沖縄なども候補にありましたが、小笠原諸島の母島もカカオベルトに近いところに位置しており、何より自身も暮らしている『東京都』ということでより身近に感じられたため、東京都小笠原村での栽培を決定致しました」と明かす。

 この「カカオベルト」とは、カカオ栽培がされている地域で、赤道を挟んで南北緯20度の間に集中している。例えば、アフリカでは、日本でもよく知られるガーナをはじめ、コートジボワールやマダガスカルなど、中南米はコロンビア、エクアドル、ブラジルなど、アジアはベトナム、マレーシア、インドネシアなどとなる。その少し北側、「北緯26度」に位置する母島が加わった。

 母島で栽培の苦労はあったのか。担当者は「何も分からないまま栽培を始めましたので、小笠原という土地での適切な栽培条件が見つけられず、一度は育て始めたカカオの木を枯らせてしまったこともありました。その後は実際に栽培している海外の農園を視察するなどして、台風被害を防ぐための特別な栽培ハウスを建設し、土壌改良を経てなんとか収穫にたどり着きました。初めて収穫されたカカオポッド(実)が工場に到着した時もまだ半信半疑。カカオポッドからチョコレートを作るのは誰もやったことがなかったので、実際に加工しても食べてみるまでチョコレートの味がしないんじゃないかと不安でした」と振り返る。

  東京カカオの特徴、新商品の評判も聞いた。

 「フルーティーなフレーバー、特徴的な酸味です。新商品自体の感想はまだ予約段階のため、いただけておりませんが、昨年ご購入いただいた方のリピート注文が多いと感じております。東京産カカオだけを使っているため、カカオ本来の味が楽しめ、作柄によっては味が変わることもあるのが東京カカオの特徴。『今年のフレーバーが今から楽しみです』といったお声をいただいております」

 コロナ禍の影響、今後の対応策は?

「コロナ禍の影響が出る前に2019年分は販売が終了していたため、販売面では大きな影響が出ておりませんが、栽培地が離島ということで訪問を自粛し、農家さんとのコミュニケーション方法を見直しています。これからも遠方への旅行は、はばかれる時期が続くかと思いますので、東京産カカオとチョコレートができるまでのストーリーを通して、ふるさとや旅行気分を感じていただいたり、発見をしたり、体験できるチョコレートへと育てていきたいと考えています。帰省などもできない中、郵送で贈る『リモートギフト』にもおすすめです」

 「チョコレート屋のおやじ」が東京産のチョコを食べたいという思いから10年以上をかけた夢が小笠原村で実った。日本最南端の都道府県が東京都であることを再認識した。

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