昨年は将棋界が特に注目された一年だったが、将棋にまつわる名前を冠したアイスがあるのはご存じだろうか。1967年に大阪で誕生した「王将アイス」は昨年、記念すべき50周年だった。駄菓子屋で1本10円だった頃から現在まで安定して売れ続けている、伝説的なアイスだ。
製造は大阪市東成区の林一二株式会社(センタン)。発売当初は「フランス」と名付けていたが、あまり売れず、当時大流行していた歌にあやかって「王将」と改名すると、人気が出始めた。1本でチョコ、バナナ、イチゴの3種類が味わえる棒付きアイスで、かつては大阪中の子供たちが食べていたという。
時代の流れで駄菓子屋は減少したが、その後コンビニで販売するようになり、大人にも好まれる味に改良された。同社冷菓事業部・企画開発室デザイン担当の竹本さんは「素材の味を生かしながらも、だんだん濃く、フルーティーになってきています」という。
味は進化しても素朴で懐かしい味わいを守り続けているからこそ、今も幅広い世代から人気を集めているのだろう。「何があっても『王将』だけはなくしたらあかん」と社員の愛着もひとしおだ。
また、関西のメーカーらしい「おもしろアイス」でありたいという思いもある。ある時は「世界の王将」と題してハワイやフランスをイメージした新商品を開発したこともあった。通常のパッケージは、あえてレトロでご当地感のある雰囲気に仕上げている。50周年記念には将棋盤の絵をデザインしたが、これも、将棋ブームを意識してのことだ。
「王将」には特定の販売店がなく、なかなか見かけることがない。今は個包装では販売しておらず、1箱6本入り(標準小売価格300円=税別)でスーパーに卸しているが「運が良ければ、北海道から九州までのどこかで出合えると思います」(竹本さん)というほど希少な存在となっている。
世の中には「見つけたら幸せになれる」という縁起がいい商品がいくつかある。「王将」もそれに近いといえるかもしれない。新年の運試しとして、行く先々のスーパーを探してみてはどうだろうか。