鶏の胸肉を一番美味しく焼けるという「30分チキン」なる調理法がSNS上で話題になっている。
「30分チキン」はいたってシンプル。冷たいままのフライパンに肉の皮目をぴったり張りつけて塩コショウし、あとは弱火でひたすら放置。30分目でようやくひっくり返し、火を止めてまた10分放置するというものだ。
イナダシュンスケさんのツイート
「鶏ムネ肉を一番美味しく焼く「30分チキン」。 つめたいままのフライパンに鶏ムネ肉の皮目をぴったり貼りつけて塩胡椒したら、火をつけます。あくまで弱火です。」
鶏ムネ肉を一番美味しく焼く「30分チキン」。
— イナダシュンスケ (@inadashunsuke) August 22, 2020
つめたいままのフライパンに鶏ムネ肉の皮目をぴったり貼りつけて塩胡椒したら、火をつけます。あくまで弱火です。 pic.twitter.com/O9prA0Urhn
世の中にはさまざまな手の込んだ鶏の焼き方があるが、こんなシンプルな調理法が一番美味しく鶏を仕上げられるとはどういうことだろうか。Twitter上で「30分チキン」を紹介したイナダシュンスケさんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):イナダさんはこの調理法をどうやって編み出されたのでしょうか?
イナダ:この調理法自体はフレンチの基本的なテクニック、というかフランスでは家庭でも行われているオーソドックスな手法です。
ただ、低温から皮目をゆっくり焼くという部分は共通でも、オーブンを併用する、オイルやワインを加える、といったいくつかのバリエーションがあり、その中で日本の家庭で気軽に作れるシンプルなこの方法が結局一番という結論に至りました。
最初はモモ肉で作っていましたが、モモ肉はどういう焼き方でもおいしい。この調理法の良さを最大限に生かせるのはむしろムネだなと思っています。
中将:なるほど、フレンチのテクニックなんですね!
「30分チキン」の魅力の真髄をお聞かせください。
イナダ:パサつきがちなムネ肉をジューシーに仕上げる方法はいろいろありますが、皮のパリパリを同時に叶える方法はほかにあまり無いと思います。
焼きたてが一番ですが、鶏ハム的に常備菜として冷たいままや、サラダチキンのようにさまざまな料理に展開しても楽しめます。
意外と重要なのが焼いた後フライパンに残るエキス。これを無駄なく活用する事で、プロっぽい味のソースが簡単に作れます。白ワイン、トマト、バルサミコ、マスタード、レモン汁などお好みの素材を加えて鍋肌をこそげ軽く煮詰めるだけです。
中将:Twitterの投稿を見る限り「30分チキン」はいたってシンプルな手順ですが、中にはそれでも不安になったり失敗してしまう人がいるかもしれません。「30分チキン」を作る上で守らなくてはならないことを改めてお聞かせください。
イナダ:余計なことをしないのが一番です。フライパンを予熱したり油をひいたりせず、鶏肉を室温に戻す必要も特にありません。ただただ皮が折り重ならないようにしっかり広げて、それをフライパンに密着させてください。火を入れはじめたら鶏肉は絶対に動かさず「焦げるかも?」と心配になってもグッと堪えてください。
またIHの場合は、ひっくり返した後完全に火を切らず「保温モード」の方が確実です。Twitterに書いた時間はあくまで目安なので、肉の厚さや火力によって変わります。それを見極めて完全に火を通してください。火は完全に通ってるがうっすらピンク、というのが理想の仕上がりですが、料理に慣れていない人がそれを目指すのは危険なので、まずはしっかり焼く事を目指してください。
この焼き方なら多少焼きすぎても充分おいしいですし、逆に切ってみて火が通っていない部分があったら、スライスしてから両面を焼いても良いです。
【イナダシュンスケ プロフィール】
鹿児島県生まれ。京都大学卒業。
飲料メーカー勤務を経て、株式会社円相フードサービスを設立。多くの飲食店の立ち上げに携わり、2011年には東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。
著書に「人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本」(扶桑社新書)、「南インド料理店総料理長が教える だいたい15分! 本格インドカレー」(柴田書店)がある。食全般に造詣が深い。
イナダシュンスケ監修 南インド料理専門店「エリックサウス」通販サイト
https://www.erickcurry.jp/
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ふつう鶏肉を完全に焼くと肉は70〜75%まで縮んでしまうが、この「30分チキン」だとそれを80%以上をキープでき、その分ジューシーさとうまみを堪能できるのだという。
いたってシンプルだが、他にはない鶏肉の魅力を引き出せる「30分チキン」。ご興味のある方はぜひイナダさんの投稿やインタビューを参考にしつつ、ご自宅でお試しいただきたい。