おとうさんへ
おとうさんがへびにたべられたら はなえもたべられていいよ。
どうしてそうおもうかとゆうと おとうさんがすきだから。
5歳の娘からこんなラブレターをもらった。「I LOVE YOU」を「一緒にヘビに吞まれてもいい」と表現するその感覚に、正直一瞬恋に落ち…いや、落ちないけど、しばらく頭の中で二人一緒にヘビに呑まれている様子を想像し、時間を奪われてしまった。
ああ、こんなことを言われたら…。もう、抱きしめるしかない…。そんな微笑まし過ぎる、そしてうらやまし過ぎるエピソードが先月、ネット上を駆け巡りました。ツイートを投稿したのは、母との死別を描き映画化もされた「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った」(新潮社)や育児漫画「そのオムツ、僕が換えます!」(モーニングコミックス)などで知られる人気漫画家の宮川サトシさん。改めて経緯と、その後の娘さんの様子を聞いてみました。
―どんな状況で手紙を渡されたのですか?
「娘は、手紙を書くのは本当に好きなようで、家でも保育園でも、暇さえあれば書いてる印象があります。これまでにも物凄い数の手紙をもらっていて、専用の保管箱を設置したぐらい(笑)。この日は土曜日で、午前中に近所の喫茶店で書き物の仕事をしてたんですが、戻ってきた時に待ち構えてたように手渡してくれました」
―かわいい…! でも、どこから、「ヘビにのまれる」なんて発想が??
「もしかしたら、この手紙をもらう前日の夜、何かの話の流れで『そりゃいつかお父さんもお母さんも先にいなくなるんだけど、まだまだ先の話だよ』みたいなことを話したように思うんですね。そこから娘は娘なりに死別する未来(=ヘビにのまれる)を想像して、あの手紙を書いたのではないかと。無闇に不安にさせるつもりはないですし、かなりマイルドにさらっと話したつもりなので全然その話がきっかけではないのかもしれませんが…」
―5歳で「死」の意味って、きっと相当怖いですよね。伝え方も悩んでしまいます。
「その手紙の後、娘の中で何かが回転し始めたのか、急に寝る前に『昔の話をして』とねだるようなったんです。で、いろいろ笑い話とかしてるうちに、『私が生まれる前の話を聞かせて』と、ちょっと5歳にしては踏み込んだお願いをしてきまして、で、僕が20代の頃、白血病になって生死の境を彷徨った時の話をしたんです」
―娘さんは、何と?
「すると、『お父さん、死にそうだったってこと?』と急に不安になったようで、布団の中に入ってきてしがみついてきました。『でもね、手術(移植)して助かって今は元気なんだよ、長生きできるように頑張るよ』と励まし(?)たんですが、まだ心配だったらしく、娘は興奮気味に『お父さんが死んだら終わりじゃん…世界が終わるじゃん…宇宙が終わっちゃう…(原文ママ)』と…。オーバーだなと思う一方で、なかなか面白い物の捉え方をするのだなと思いましたね」