成人の約8割がかかっているとまでいわれる歯周病。「沈黙の病気」と言われていますが、歯周病の方は新型コロナウイルスに感染するリスクが高くなるといいます。そのため、歯周病に対して予防や治療に努め「口の中を健康に保つこと」など早めの対策が必要です。
歯周病があるとコロナに感染しやすい
新型コロナウイルスは、飛沫感染や接触感染、最近では空気感染でもうつると言われています。感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にコロナウイルスが放出され、そのウイルスを口や鼻などから吸い込むことで感染。あるいはウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触るなどすると、粘膜から感染しやすくなります。
しかし、ウイルスが口の中に入ってきたからといって、誰もが感染するわけではありません。ウイルスは喉にある特定の場所から侵入するのですが、ここは通常、糖タンパクにより守られています。しかし、歯周病菌が産出する物質がこの糖タンパクを破壊することがあり、そのような状況ではウイルスが侵入しやすくなります。
気づかないうちに進行する歯周病
歯周病はいまや国民病の一つです。歯と歯茎(歯肉)のすき間(歯周ポケット)から侵入した歯周病菌が歯肉に炎症を引き起こし、さらには歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてしまうのです。気づかないうちに進行し、歯肉の出血などで気がつく人が多いようです。ひどくなれば、自然に歯が抜けます。「歯がグラグラしている」という人は要注意です。歯を失う人の80%以上がこの歯周病もしくは、むし歯です。
予防と治療について
歯周病予防の基本は、口の中の悪玉菌の数を減らし、プラークを除去することです。そのために毎日の歯みがきは欠かせません。しかし、普通の歯ブラシだけでは磨ききれないところもあります。歯と歯の間などは歯ブラシだけではうまく歯垢がとれません。歯間ブラシやデンタルフロスといった補助的な道具も加えて、できるだけ丁寧にこまめにみがきましょう。また、歯だけでなく舌の汚れを落とすことも重要です。
歯垢は自分でもとれますが、歯石(歯の表面にあるザラザラ)は歯科医院で定期的に受診して歯垢とともにとってもらいましょう。歯周病になった場合は治療を受けることになります。痛みがあったり、腫れがひどかったりした場合は抗菌薬(抗生物質)を処方したり咬み合わせを弱くしたりして、症状の緩和に務めます。その際に、下記のような治療や指導も行なっていきます。
(1)咬み合わせのチェック
咬み合わせも重要です。咬み合わせは歯槽骨にも影響を与えます。
(2)抜歯もありえます
歯周病にかかっている歯は隣の歯までダメにすることがあるため、重度の歯周病の場合は抜歯することもあります。
(3)歯みがきは重要
歯周病治療で欠かせないのが正しい歯みがきの方法です。持ち方や、毛先の当て方、動かし方、力の入れ方などを指導してもらいましょう。
(4)歯石は除去しましょう
超音波などを用いて歯石を破壊し洗い流す方法や、1本1本歯石を取っていく方法などがあります。
(5)喫煙者は要注意
喫煙は歯周病のリスクを高めるだけでなく、歯肉の治りが遅いなど、治療にも影響を与えます。
(6)他の病気との関わり
糖尿病などがあれば、歯周病の悪化にも結びつきます。そのため、持病との治療を連携させる必要もあります。
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歯周病が進行すると誤嚥性肺炎などさまざまな病気を引き起こします。歯科医院での歯周病予防は「不要不急」ではありません。コロナ禍を乗り切るためにも、マスク着用だけでなく、お口のケアもしっかりして感染予防に努めましょう。