いたずらがひどくて分離不安症…置き去りにされトラウマを抱えた犬 セラピードッグとして活躍

渡辺 陽 渡辺 陽

雑種犬のニライくんは、子犬の時に誰かに捨てられ市中を放浪していた時に警察が保護した。保健所に行く前に個人で保護活動をしている人がニライくんを預かり、その人の弟が飼いたいと言った。ところが、子犬にニライくんはいたずら盛り。やっぱり飼えないと里親を探すことになった。 

いたずらがひどくて飼えない

2006年4月、雑種のニライくんは、大阪府守口市の路上をうろうろしていたところ、たまたま通りかかった女性に保護され、警察に連れて行かれた。生後8カ月くらいだった。警察で2週間、飼い主が現れるのを待ったが誰も来なかった。

保健所に連れて行かれるはずだったが、個人で犬の保護活動をしている人が預かったという。その人の弟がニライくんと一緒に暮らし始めたが、まだ子犬のニライくんは留守番中に階段をかじったり、ごみを漁ったりした。「いたずらがひどくて飼えない」ため、ニライくんの里親を探すことにしたそうだ。

頭から離れない犬

京都府に住む海老名さんは、専門学校でドッグトレーナーとドッグセラピストの資格を取得し、戸建てに引っ越したのを機に犬を飼うことにした。一緒にドッグセラピーの仕事に行ける子が良かったという。

「ブリーダーのところにいる純血種の犬や雑種の犬を飼わないかと声をかけてもらったのですがなんだかときめかない。雑種が好きだったので数カ月間譲渡サイトで一緒に暮らしたいと思える犬を探したんです」

譲渡サイトでニライくんを見つけた海老名さん。2006年6月20日、ニライくんに会いに行った。おもちゃを投げてみたり、わざと大きな音を出したりして反応を見てみた。

「帰宅してからも頭から離れない、印象に残る犬でした」

他にもニライくんを希望した人が何人かいたそうだが、ニライくんを見に行った時、ニライくんが海老名さんの横でずっと伏せていたので、保護主さんに「あなたにもらってほしい」と言われた。

お腹がパンパンに張っていた

7月4日、海老名さんが迎えに行くと、ニライくんは振り返ることもなくピョンと車に飛び乗った。生後10カ月になっていたが、6月に会った時よりもやせていて、被毛は毛糸の束のような毛玉だらけになっていた。何より気になったのは、お腹がパンパンに張っていたことだった。

病院に連れて行くと、ドッグフードの食べ過ぎでお腹が張っていたことが分かった。

「預かっている犬に里心がつき過ぎないよう一定の距離を保っていると聞いていましたが、迎えに行った時、本当に犬のことを思っていたのかどうか分からないなと思いました」

セラピードッグとして活躍

ニライくんは温和だが、ひどい分離不安症だった。引き取った翌日、ちょっと買い物に出かけようとすると、クレートの中から「キャイーン、キャイーン!」と吠えまくった。まるで叫び声のようで、数軒先の家の前まで聞こえてきた。近所の人に聞いたり、ビデオカメラで録画したりすると1時間経っても、2時間経っても吠えていることが分かった。

「子犬の時に置き去りにされた時のショックや保護されるまでの飢えや不安、恐怖がトラウマになっているのだと思いました」

「大変!こんなはずじゃなかった」と思ったが、一緒にいると可愛くて愛おしく、一緒にいると時が経つのを忘れるほどだった。最初は近所のスーパーに買い物に行くこともできず、ご主人か海老名さん、どちらかが家にいる時に用事を済ませたが、少しずつ留守番もできるようになったという。

ニライくんはセラピードッグや家庭犬訓練は順調にこなし、1歳になった頃から海老名さんと一緒に施設を訪問、セラピードッグとして活躍するようになった。14歳半になりセラピードッグは引退、のんびりシニアライフを楽しんでいる。

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