新型コロナウイルスが流行して以来、マスク着用が義務付けられている職場は多いと思う。デスクワークなら大して問題も無いと思うが、接客業や肉体労働の方たちはさぞご苦労が多いだろう。特にこのところ小池百合子都知事がとやかく言っている「夜の街」で接客業にあたる方たちはそもそもマスクをしていて成り立つ商売ではない。マスクをしていては仕事のクオリティを落としてしまいかねないし、かといってしなければ感染のリスクは高まるばかり……その苦悩はいかばかりだろうか。
そんな中、夜の街で接客にあたる方たちの間で「夜のマスク」として話題沸騰の商品があるという。それは山形県米沢市の和装コートメーカー「おとづき商店」が制作した「フェイスベール」。緊急事態宣言が解除されラウンジやクラブなど夜のお店が営業を再開するにあたって、スタッフとお客が安全保ちつついかに華麗な空間を演出するかという課題をクリアするために考えに考え抜かれた画期的な商品だ。今回、まいどなニュースではおとづき商店専務の弟月千恵子(おとづき ちえこ)さんにお話をうかがっている。
中将:「フェイスベール」はマスクの概念にとらわれない非常にユニークな発想の商品ですが、どういった経緯で開発にいたったのでしょうか。
弟月千恵子(以下「弟月」):山形県では5月14日に緊急事態宣言が解除されたのですが、それに先立って米沢市でラウンジを経営する有限会社フェリスの齋藤代表から「お店のスタッフたちが安心して使えて、かつ仕事もしやすいマスクを作れないだろうか」という打診がありました。実際にスタッフの方たちとも話し合いの場をもうけてうかがったところ「つけたまま飲食ができる」、「華やかでお洒落」などの要素が重要ということでした。たいへん難しいなと思いましたが「私たちのような悩みを抱える全国の女性のためにも是非」という言葉を聞いて必死で制作いたしました。
中将:着用したまま飲食できるというのは画期的ですね。見た目にもアラビア風と言うかとても華やかです。
弟月:この形はベリーダンスのフェイスベールから思い付きました。色味や生地のタイプもいろいろそろえて、ファッション的な感覚で選んでもらえるよう配慮しました。
中将:おとづき商店さんではフェイスベール以前から「おとちゃんマスク」というマスクの製造を手掛けておられるようですね。
弟月:そうなんです。私共はそもそも和装コートの卸売りなんですが、2011年の東日本大震災のおり綿布の端切れを被災地に提供させていただいたことがありました。その残りを何かあった時のためにと在庫にしていたのですが、今回の新型コロナによるマスク価格高騰を見かねた米沢市役所の方が「年金生活者にも買える値段でマスクを作れないか」と打診してくださったんです。その頃、米沢市内では布マスクが約1,200円したのですが、私共では600円で提供させていただきました。また米沢市内の小中学校、置賜地方の高校にも寄贈して、たいへん喜んでいただきました。
中将:そういったご準備やノウハウが「フェイスベール」の制作を可能にしたんですね。
弟月:その通りです。「おとちゃんマスク」で地域の皆さまのためにと頑張ったことも「フェイスベール」の発売やPRに多くの方がお力添えしていただけるきっかけになりました。株式会社リゾリューションズ、米沢酒販協同組合、米沢商工会議所などさまざまな関係先のおかげで「フェイスベール」を世に出すことができたと思っております。
中将:「フェイスベール」のご反響はいかがでしょうか?
弟月:接待業の女性にはたいへん喜んでいただけているようです。楽団や農業の方など、はじめ予想していなかった業種の方からもご注文があって面白いですね。これから暑い季節になりますので、男性の方や会社勤めの方にも使っていただけるようなタイプも作りたいと思っております。
このところ日常的なマスクの着用が原因で熱中症や耳の皮膚の炎症を発症する方も増えているようだ。業種に限らずこのフェイスベールが普及すればそんな悩みも一挙に解決し、より快適なウィズコロナ生活を送ることが出来るだろう。今後のさらなる商品展開に期待したい。
■「フェイスベール」通販ショップ 「チヨダヤ」 https://faceveil.net/products/detail/3