昨年7月の参院選広島選挙区をめぐる買収事件で逮捕された前法相で衆院議員の河井克行容疑者と妻で参院議員の案里容疑者に対し、東京地検と広島地検が夫妻のスマートフォンを押収し、衛星利用測位システム(GPS)機能による位置情報を解析して現金の配布先とその日時の特定をしていたことが報じられた。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は23日、当サイトの取材に対し、スマホの普及による捜査手法の変化を指摘した。
克行前法相と案里議員は地元県議ら94人に票の取りまとめを依頼するなどして合計約2570万円を配った公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕された。検察当局は今年3月上旬、夫妻の携帯電話のGPS機能から位置情報を解析し、同下旬から広島の地元議員らを任意聴取。その際、議員らにも携帯電話の任意提出が求められ、位置情報の日時や場所の一致などデータ照合をすることによって裏どりが進められていた。
小川氏は今回のGPSを活用した捜査に注目。「スマホの保有率は2019年には80%を超えています。今後さらに増えていき、位置情報の解析捜査も進められていくでしょう。かつては『足で稼ぐ捜査』だったのが、防犯カメラを使った捜査に進化し、今後は防犯カメラを援用しながら、GPS機能で位置情報を割り出すというスマホを活用した捜査手法が展開されていく」と解説した。
さらに、小川氏は「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の中、韓国ではGPSの位置情報を使って感染者の濃厚接触者や感染エリアを把握するのに活用されました。日本では個人情報のこともあって警察が簡単に使うことはできませんが、河井容疑者のケースのような重大な事件に対しては、いつ、誰と、どこでといった情報をつまびらかにするため、捜査に活用できる」と付け加えた。
その上で、小川氏は「不安に思う人がいるかもしれませんが、警察は個人の位置情報まで簡単に知りえる状況にはありません。位置情報を知るには裁判所の令状を取っての捜査になります。そこは誤解のないようにしてほしい。ただ、スマホの普及によって今後、捜査手法は変わっていくということは確かです」と補足した。