延期が続いていた2020年のプロ野球が19日、予定より約3カ月遅れて始まった。夏にようやく訪れた“球春”。虎党が集まる居酒屋やスポーツバーは、新型コロナウイルス感染防止対策をしっかり取って客を迎え入れた。開幕戦で阪神は悔しすぎる逆転負けを喫したが、敵は巨人だけではなく…。
兵庫県尼崎市の阪神杭瀬駅前にある居酒屋「寅吉」は、阪神タイガース応援居酒屋をうたう。マスターは「生まれた時から阪神ファン」と名乗る71歳の敏夫さん。宜野座キャンプに毎年通うほど筋金入りの虎党だ。
伝統の巨人―阪神戦で、ようやく幕が開いたシーズン。「今季はボーア次第。4番に座ってくれたら、周りも良くなる。マルテにも期待。Aクラスは大丈夫」と2年目の矢野虎に期待していた。
例年、シーズン中は甲子園応援帰りのファンや遠方からはるばる来店する虎党で店内が盛り上がる。開幕戦の当日も、試合前からレプリカユニホーム姿の客が来店。回を追うごとに客が増えたが、今年は少し雰囲気が違った。
営業中は店のドアをすべて撤去。カウンター席も、1席ずつ開けてファンが着席するなど社会的距離をしっかりキープ。「密」を徹底的に防いだ。阪神が得点するたびに客が総立ちになったが、抱き合ったりハイタッチなどはなし。その代わり、ひときわ大きな拍手が巻き起こった。
ヤジやぼやきもマスク着用。「西あそこで代えたらあかんわ…」「吉川のホームラン、甲子園やったらライトフライやで」「開幕って来週やったっけ?」と、負け惜しみも混じったやや控えめな声が店内で聞こえた。
大インチのモニターを置き、プロ野球中継を放映していた大阪市内のとあるバー。今年はSNSでの告知や宣伝をやめ、ひっそりと“開幕”した。コロナ禍の下、ファンでごった返す店内は逆効果になるといい、店長は「自粛警察対策です。ずっと休業していて、ようやく最近営業を再開したのに…」と、かき入れ時をみすみす逃したもどかしさを訴える。
コロナ感染拡大で、営業を自粛していない店に中傷の貼り紙や嫌がらせをする行為が相次いだ。緊急事態宣言が解除され、店に営業自粛を求める代わりに「今度は営業時間とか、店内が密だと言いがかりをつけてくる人がいる」と、私的な取り締まりをする人はまだまだ存在。この店では実際より短い営業時間をホームページに載せるほどの念の入れようだ。
惜敗した開幕戦に続き、2戦目は大敗を喫した阪神。それでも「久々に野球が見られてよかった」と開幕戦を見届け、店を後にする人が多かった。球場そしてファンが集う店で、気兼ねなく「六甲おろし」が歌えるようになるのはいつの日か…?