悪臭を放つ上にモモやナシなどの果樹の害虫となるカメムシ2種が、今夏は西日本を中心に例年になく大量発生している。発生数が平年の15倍以上に達した地域もあり、6月9日までに全国14県で「カメムシ注意報」(正式名は病害虫発生予察注意報)が発表された。なぜ、今年はカメムシの当たり年になってしまったのか-。
注意報を発表した14県の病害虫防疫所によると、大量発生しているのはチャバネアオカメムシ(体長約11ミリ)とツヤアオカメムシ(同約15ミリ)の2種がほとんどという。いずれも、モモやブドウ、カキ、かんきつ類などの果実に口を突き刺して果汁を吸う。被害果実は、中身がすかすかになったり、変形や落果をしたりして、商品価値を失う。
農林水産省によると、6月9日現在、「カメムシ注意報」を発表しているのは、富山、岐阜、愛知、滋賀、兵庫、奈良、岡山、山口、香川、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本の14県で、西日本での広がりが目立つ。
滋賀県病害虫防疫所によると、4~5月に夜間の照明に集まったカメムシ2種の数を調べたところ、「チャバネ」が473匹で平年の7.1倍、「ツヤアオ」が281匹で平年の16.5倍となり、いずれも過去10年間で最も多かった。また、県内19カ所で調査した「チャバネ」の越冬数も過去10年間で最多となった。
モモの名産地で知られる岡山県でも、フェロモントラップに集まった「チャバネ」の数が過去10年間で最多となった。同県病害虫防疫所は「大きな被害はまだ出ていないが、防除が必要」と警戒。かんきつ類の特産地である愛媛県の病害虫防疫所も「今はモモやナシが中心だが、秋以降に数が多くなると、温州ミカンやイヨカンの果実に被害が出る」と心配している。
なぜ、今夏はカメムシが大量発生しているのか。滋賀県病害虫防除所の担当者は「昨冬が記録的な暖冬で越冬しやすい環境になり、冬を越した成虫が出てきている」と推測する。気象庁によると、昨冬(昨年12月~今年2月)の西日本の平均気温は、平年より2度高く、観測史上最高の暖冬だった。
大きな原因がもうひとつ考えられる。この2種は果汁も吸うが、本来の主食はスギやヒノキの果実だ。昨年はスギやヒノキの果実が豊作だったため、越冬に臨む個体が多くなったとみられるという。
果樹への影響はもちろん大変だが、このカメムシ2種が洗濯物につくのかどうかも生活者としては気になるところだ。秋から初冬にかけて全国のベランダの洗濯物内に出没し、服を着た途端に悪臭を放つのは、茶色の「クサギカメムシ」がよく知られる。
滋賀県病害虫防疫所によると、「クサギ」だけでなく、「チャバネ」と「ツヤアオ」も大量発生すると洗濯物にくっつくことがあるという。カメムシは、夜行性で光に集まる性質があるため、夜は洗濯物を取り込んだ方が良さそうだ。