猫城主さんじゅーろーが“公務”復帰 備中松山城休業中は「さみしかったよ〜」

山陽新聞社 山陽新聞社

 お久しぶりニャン!! 新型コロナウイルス感染拡大の影響で休業していた備中松山城(岡山県高梁市内山下)が約50日ぶりに再開したのに合わせ、猫城主として人気を集める「さんじゅーろー」も“公務”に復帰した。待ちわびたファンらが次々と足を運び、猫城主の元気な姿を、写真や動画で撮影するなど、再会の喜びをかみしめている。

 さんじゅーろーは2018年の西日本豪雨後、同城で保護された推定5歳の雄猫。備中松山藩の藩士から新撰組の隊長になった谷三十郎にちなみ「さんじゅーろー」と名付けられ、人懐こい性格が観光客の人気を集め話題になった。一時行方不明になったが、無事保護され、城のPR役「猫城主さんじゅーろー」として同年12月に正式デビュー。高梁市観光協会は「豪雨で落ち込んだ城の観光客数をV字回復させた救世主」という。

触れ合い禁止

 猫好きがひっきりなしに訪れていた同城。コロナ禍で4月10日から臨時休業となり、さんじゅーろーもお休みしていたが、6月1日に活動を再開。感染対策徹底を呼び掛ける城内では、1日2回の見回りをしていたさんじゅーろーも感染予防のため、移動は竹灯籠で囲われたエリア(直径約3メートル)内に限り、見物客との触れ合いも当面禁止となった。

 直接触れることができなくても、その姿を見るだけで癒やされる。標高430メートルにそびえ、「天空の山城」と呼ばれる同城も風は吹けども降り注ぐ夏の日差しは厳しく、さんじゅーろーのお気に入りは、冷たい石の上に寝そべること。あくびをしたり、ねこじゃらしで遊んだりする愛らしい姿に、スマホのシャッター音が響く。岡山市から訪れた会社員女性(29)は「お城の再開を心待ちにしていた。生のさんじゅーろーを見ることができ大満足」と話す。

休み中はSNSで発信

 休業中もさんじゅーろーは本丸の管理事務所に常駐。「会いに行くことができないから、SNSの投稿を増やしてほしい」との要望を受け、同協会は、ツイッターなどで日々写真とともにさんじゅーろーの暮らしぶりを発信。昨年のゴールデンウイークには1日千人以上の来客に囲まれていたが、パタッととだえたため、いつもはチラ見するだけの管理人や同協会職員にも「構って、相手して」といわんばかりにすり寄ってきたそうだ。

 再開して1週間余り。前年同期で比べると平日150~200人だった入場者は、今は多くて約60人と半分以下だが、同協会は「だれも来ない日々は寂しかったのだと思う。少しやせていたが、今は食欲も戻り元気いっぱい。よく来たな~と人に寄っていくほど人慣れしているので、触れ合い禁止は心が痛むが、安全第一にお客さまを迎えたい」とする。

 「高梁市さんじゅーろーマスク」も6月1日から一般販売スタート。ベージュ、ピンク、パープルの3色でサイズも3種類(1枚770円)あり、別添えのさんじゅーろーのステッカーを、好きな場所に張ることができる。同協会や天満屋高梁ショップ(天満屋ハピータウン高梁店1階)、天満屋ネットショップなどで取り扱っており、好評という。

漫画でアピール 

 緊急事態宣言が解除され、さんじゅーろーも公務復帰を果たし、周辺の観光・文化施設も少しずつではあるが、日常を取り戻しつつある。吉備川上ふれあい漫画美術館(高梁市川上町地頭)では、さんじゅーろーにちなみ、猫をテーマにした漫画の特設コーナー「猫マンガ、はじめました!」を5月から開設し、歴史書、料理本、飼い方の指南書まであらゆるジャンルの約80作品を並べる。さんじゅーろーの写真23点も展示し、猫好きにアピール。特設コーナーの開設期間は8月30日までだが、漫画はそれ以降も読むことができる。

 「自宅で仕事する漫画家は、猫を飼っている人も多い。どの作品も描写がリアルで猫好きにはたまらない」と同美術館。城から同美術館へつながる道沿いには、山田方谷記念館(同市向町)や成羽町美術館(同市成羽町)、道の駅などが点在し、地元の歴史や文化、さらには特産品に触れる機会にもなる。同美術館は「さんじゅーろーファンを美術館へ引き込むことで、市内の回遊性を高めたい」としている。

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