Withコロナ時代、僧侶×臨床心理士の吉村昇洋氏に聞く不安や恐怖に翻弄されない生き方

渡辺 陽 渡辺 陽
吉村昇洋氏
吉村昇洋氏

――コロナウイルスではなく、他の関連要因で亡くなる人もいます。

吉村 倒産で首をくくる人もいるでしょうし、コロナいじめで命を絶つ人もいる。コロナウイルス自体で死ぬ人だけじゃない。そのほうが問題です。

これは、コロナウイルスをうつした人ではなく、愛を叫んでいる人が人を殺すのです。そうした加害観、自粛しないやつらが悪いと悪者探しをしたり、感染した人を犯人のように探したりする人たちに、「自分が人を殺している」という自覚があるでしょうか。自分は間違ったことをしていないという認識の中で人を攻撃し、追い詰め、死に至らしめているのです。

要は、正義感が過剰なんです。自分の行動によって人が死ぬかも知れないという可能性に思いが至らず、「愛する人を守るためにやっているのだから、間違ったことではない」と思ってしまう。周りが皆自粛要請に従っているのに、安易な気持ちに流されて愚かな行為をし、案の定感染した人がいたとしても、死んで償うほどのことではありません。しかも、SNSを通して、関係のない人がとやかくいうことではなく、あくまでも当事者同士の問題です。今回の新型コロナは、感染という現象によって、その当事者の範囲が広くなっていることも特徴でしょう。

また、その広さゆえに、メディアに乗った情報と自己存在がフュージョン(融合)し、実際には距離のある話でも、自分の身近で起きたように錯覚し、危機感が増幅。ついには、自分の身に降りかからないように過剰防衛で攻撃に至るという構図です。もちろん、メディアを通して、正確な情報を受け取り、しっかりと危機意識を共有して、適切な行動をとれるようになることは大切なことなのですが、どうも受け手の感情が過剰に反応してしまっているように見受けられます。まずは、自分が加害者になっているのではないかということをちゃんと見つめられているかどうか、問いたいところです。

そんなときには、自分が感染したと仮定してみてください。先ほどまでの自分と同じような内集団の人々に、次の瞬間には外集団認定され、手のひらを返したように誹謗中傷される立場に早変わりです。

――混乱している時ほど客観的に自分を見つめなおす必要があるのですね。

吉村 冷静にならなければいけないが、多くの人は、どうすれば冷静になれるのか分からない。人間は進化の過程でネガティブな情報に反応するようになりました。ある人が言っていたのですが、空腹状態の時に、ライオンが近くにいるという情報と美味しいマンゴーの木があるという情報なら、ライオンがいるという情報のほうがより命に関わるので強く印象に残る。ネガティブな情報であればあるほど強く、重く迫ってくるのです。

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