「アベノマスク」が京都市内の我が家に届いたのは、緊急事態宣言が解除された後の5月下旬。既に、品切れが続いていたドラッグストアにマスクが並ぶようになり、妻と子は手作りマスクを着けている。「もう、いらんのやけど…」と思いつつ、せっかく国が無料でくれたのだから、使ってみることにした。1週間連続でアベノマスクを着けてみると-。
我が家に届いたアベノマスクは縦9・2センチ、横13・3センチ。15層のガーゼが重ね合わせられ、ゴム製のひもがついている。厚生労働省によると、製造元は3社あり、大きさにミリ単位で差がある可能性はあるが、品質や仕様はほぼ同じという。ちなみに、勤務先にあった不織布マスク(京都市の医療系メーカー製)は縦9センチ、横17・5センチ。不織布マスクは折り重なった部分が伸縮するため、中央部では縦13―12センチを覆うことができ、アベノマスクよりもカバー範囲はかなり広い。
【1日目】
実際にアベノマスクを着けてみると、思ったほど小さくない。鏡を見ても、安倍晋三首相のように明らかに小さい状態ではないようだ。着け心地は不織布マスクと比べ、やや厚みを感じるが、ほぼ変わり無い。
しばらくして、長所に気がついた。紙マスクで悩まされていた眼鏡の曇りが発生しない。呼気中の水分を、アベノマスクが吸収してくれているのか。優れものじゃないか!
一日を終えた。マスク両サイドのゴムを通す部分は少し縮んだが、思ったほどでもない。
手洗いして干してみた。めちゃくちゃ縮んだらどうしよう。しかし、それは無用の心配だった。朝には当初の姿をほぼ取り戻し、新品に比べて縦1ミリ、横1ミリの縮みにとどまった。これは意外と使えるんじゃないか-。
【2~7日目】
…という政権発足直後に抱いたような好印象は、日を追うごとに色あせていった。
初日はそうでもなかったが、2日目以降は、マスク両サイドのゴムを通す部分が縮むようになった。マスクの縦幅は目に見えて小さくなり、あくびをすると、鼻が覆えず露出してしまう。まさに安倍首相をほうふつとさせる「小さすぎるマスク」だ。
しかも、マスクが小さくなると、隙間から漏れる息で眼鏡が曇るようになった。加えて、階段を上りきったりして荒い呼吸をしている時は、呼気中の水分を布が吸って湿るため、息がしづらくなる。夏場に入るこれからは蒸れてつらくなるのが必定だ。
3日目。この日は、京都アニメーション放火殺人事件の容疑者逮捕の取材に加わったため、早朝から夜まで14時間もアベノマスクをつけっぱなしだった。ゴムが食い込み、耳が痛かった。帰宅し、顔から外した直後のマスクは縮みまくっており、縦幅は両端が約5・2センチ(当初比で約44%縮小)、横12・7センチ(同約5%)になっていた。
だが、使った後には小さく縮んでいても、洗って干すと、ほぼ元の大きさに戻る。新品と比較しても、縮むのは縦横5ミリ程度。しぶとい。さまざまな疑惑が浮上するたびに批判を浴びながらも、いつの間にか支持率を回復してきた現政権のようだ。
【1週間後】
1週間の使用を終えた8日目の朝、マスクの大きさは縦8・7センチ、横13センチだった。わずかに糸がほころんできたが、まだまだ使えそうにみえる。
ただ、アベノマスクを毎日着けてみて、気づいたことがある。街ゆく人も、会社の同僚も、誰もアベノマスクをつけていない。知り合いに会うたび、「アベノマスク?」と聞かれ、地下鉄の車内では視線が気になる。恥ずかしい。
結論。アベノマスクは、まだ使えそうだが、市販品のマスクに戻すことにした。着けているとどんどん小さくなってしまうことと、外出時に恥ずかしいことが主な理由だ。菅義偉官房長官がおっしゃるように、「第2波」が来て、再びドラッグストアからマスクが消えたときのために、保管しておこう。