新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府は1世帯あたり2枚ずつ布マスク(通称:アベノマスク)を配布することを決定。大阪でも5月半ばから配布が始まった。しかし、手作りの布マスクが珍しくなくなったり、店頭でも不織布マスクが少しずつ買えるようになっており、すでに「マスクには、あんまり不自由していない」という人が増えている。そんな状況下で届くアベノマスクを、ムダにしないでなんとか有効活用する方法はないか…大阪の街角でささやかな取り組みが始まっている。
「自分も手作りの布マスクを使っていますし、政府が配布するマスクが届いても記念に置いておこうかなという感じで、たぶん使わないと思うんですよ」と話すのは、NPO法人北田辺プロジェクト実行委員会のメンバーのひとり、小林博さん。
「『もう要らんわ』と捨てられたらもったいないし、だったら集めて、必要としているところへ届けようと思ったんです」
折しも、テレビでニュースを見ていたら、アベノマスクはホームレスの人たちには渡らないという話題に触れていた。「ここへ上手くマッチングできないかと考えました」。すぐNPOのメンバーとLINEで連絡を取り合い、考えを伝えた。それが5月13日のことだ。
NPO法人北田辺プロジェクト実行委員会は、大阪市東住吉区北田辺地区の活性化を目的として、2017年6月に設立された。自治会とか商店会の枠を超えて「なにか面白いことをしようやないか」という趣旨で活動している。10人いるメンバーのほとんどが自営業者だ。小回りが利く人が多いせいか、決めたら早かった。14日には、マスクを回収するための箱を製作、15日の朝に設置された。
小林さんが徹夜でつくったという回収箱はダンボール製で2つ。小林さんが営む木工房の隣にある喫茶店の前と、北田辺商店街の中にあるおもちゃ屋さんの店頭に置かれた。
箱の製作にあたっては、NPOのメンバーから「ゴミを入れられないように、中が見えるようにしたほうがいい」というアドバイスを受けたり、盗難防止のために投入口を小さめにしたりする工夫も取り入れたという。
こうしてスタートした「マスクを無駄にしない活動!!」。回収箱を設置してすぐ10数個が集まるなど、手応えを感じているという。中には「町じゅうのマスクを集めて、国会へ送り返せ」という激しい人もいたが、周辺からはおおむね好意的にとらえられているようだ。
活動の拠点になっている北田辺商店街は、通勤・通学客の利用も多い近鉄南大阪線・北田辺駅を東西から挟むように展開している。回収箱のほかにも、未使用のマスクをもっていったら引き取って小林さんに渡してくれる協力店もあるという。
同様の活動を行っている団体は、確認できただけでも東京都、岡山県、秋田県、福岡県などにある。活動の形も小林さんたちのようなNPO法人だったり、あるいは商店街の取り組みとして行われていたりとさまざまだ。
NPO法人北田辺プロジェクト実行委員会の、今後の展望はどうなのだろう。
「いくつ集めようという目標は、とくに決めていません。ひとまず5月いっぱいは様子をみます。集めた未使用のマスクは、たとえばDV被害に遭っている母子の支援活動をやっている団体とかホームレスの支援団体にコンタクトをとってお渡ししたい」
そして小林さんは「マスクを無駄にしない活動!!」に関してこう強調する。
「アベノマスクを批判的に扱うのではなく、必要がなくなって使わないのであれば、必要としている人のもとへ届けて有効に使ってもらおうというのが最大の目的です」
政府が配布しているマスクのほか、市販のマスクも大歓迎だそうだ。
■NPO法人北田辺プロジェクト実行委員会 https://kitatanabeproject.jimdo.com/