桃井は78歳の主演俳優に「大人のコジャレを見せてほしい。私たちに『大人になってよかった~。歳食って万歳!』と言わせてほしい」と期待する。いつの世にも若さに価値を置く風潮があるが「それって“若死にした方がマシ”と言っているようなもの」と苦言を呈する。
松田優作さんら志半ばで伝説になってしまった近しい仲間の姿も見てきたからこその苦言である。「生かしておきたかったけれど若くして死んでしまった人もたくさんいます。ならば私たちはしぶとく長生きして、いかにコジャレるか。『若い頃よりもいいね!』と言われる可能性が生かされている私たちにはあるから」と残された者の責任を桃井は感じている。
石橋は歳を重ねることに対して「肉体的にガタもくるし、歳をとるのは嫌です。しかし自然の摂理として受け入れざるを得ない」というも「重要なのは自分に飽きないことです。どんなに歳を重ねようとも、自分に飽きなければいい」と老いのない探求心が活力だ。
桃井も「歳っていくら重ねてもいい。歳をとってできた皺をご褒美のように見せたっていい。それが長生きしている私たちの使命。そして飽きずに自分を探り続けることが大切」と同じ心構えにある。
大楠道代、岸部一徳、佐藤浩市、妻夫木聡ら主演の石橋を慕う面々が集った『一度も撃ってません』には、大人たちの遊び心が詰まっている。同時にそれぞれ魅力的な歳の重ね方をしてきたからこそのコジャレも映し出されている。