水路の中から泣き続け保護された子猫 里親先の保護犬と種を超えて仲良しに

岡部 充代 岡部 充代

 猫のたまが兵庫・西宮市の松本家にやって来たのは、昨年6月のことでした。お母さんが愛犬・なっちの散歩をしていたとき、どこからか子猫の鳴き声が聞こえたそうです。

「ミャーミャーという声は聞こえるんですけど、どこにいるのか分からなくて。なっちゃんも『どこだろう?どこだろう?』って感じでキョロキョロしていましたね」(松本さん)

 

 なっちと捜索していると、道路の脇にある水路の中から声がするのが分かりました。その水路は幅が広く深い割に水がほとんどなかったので、松本さんは蓋のない場所から降りて、水路の奥を覗き込んだそうです。すると、大きな石のようなものがあり、その上に子猫がちょこんと座っていました。

「お母さん猫が迎えにくるかもしれないから、そのときは一度、家に帰ったんです。でも、様子を見に行くたびにずっと鳴いていて…。このままでは暑さにやられてしまうと思って、保護することにしました」(松本さん)

 

 網を用意して現場に向かうと、ちょうど下校時間だった小学生たちが水路に入って子猫を捕まえたところでした。でも、「うちはもう猫がいるから飼えない」「うちはウサギがいる」と、みんな困り顔。そこで松本さんが手を挙げ、子猫を段ボールに入れて動物病院へ向かいました。

「ノミが10匹くらいついていたので(苦笑)それは取ってもらいましたが、他は何も問題なくて。野良猫で何も(病気を)持っていないのは奇跡に近いと先生に言われました。病気を持っていたとしても飼うつもりでしたけどね」(松本さん)

 

 こうして子猫は晴れて松本家の子になり、たまと名付けられました。なっちにとっては「ある日突然ニャンコがやって来た!」状態。初対面のときから興味津々だったようです。

「触れたい!匂いたい!舐めたい!がすごかったですね(笑)。もともと猫が好きなのはお散歩のときに感じていました。保護される前、近くにいたのかもしれませんね」(松本さん)

 なっちは鹿児島・徳之島で保護され、沖縄や鹿児島の離島出身の犬たちを中心に保護・譲渡活動を行っている大阪の市民ボランティア『犬の合宿所in高槻』を経て、2017年8月に松本家に迎えられました。島でどのような生活をしていたのか分かりませんが、小さいときから猫と共存していたのかもしれません。

 最初は警戒していたたまもすぐに慣れ、今では何をするのも一緒。

「種(しゅ)が違うのに“あうんの呼吸”というか、うまく遊ぶんですよね。ごはんを食べるのも一緒だし、常に一緒がいいみたいです。そのせいか、たまは“犬っぽい猫”になりました(笑)。名前を呼ぶと走ってくるんですけど、その姿はまさに犬です」(松本さん)

 なっちだけでお留守番していたときは、帰宅すると必ず玄関先にいたそうですが、たまが来てからはお出迎えなしの日も多いそう。

「きっと、さみしくないんでしょうね。完全に“家族”なんだと思います」(松本さん)

 中学2年生と小学6年生の息子さん2人は、新型コロナウィルスの影響で学校へ行けない日々。何かとストレスがたまる状況ですが、「なっちゃんとたまが癒しになっているようです」とお母さんは微笑みます。

「たまが(水路の中で)大きな声で鳴いてくれてよかったです。だから気づけたし、家族になれましたから」(松本さん)

 家族になるのに“種”は関係ないのです。

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