創業60年のつまようじ屋が本気で作った「非接触棒」が人気 武漢のエレベーターをヒントに商品化

佐藤 利幸 佐藤 利幸

ステイホーム週間と名付けられ、国民一人一人の新型コロナ感染予防対策がさけばれているなか、創業60年のつまようじ屋が本気を出して作った「非接触棒」が話題を呼んでいる。つまようじが地場産業である大阪府河内長野市にある国産つまようじの製造販売を行う菊水産業株式会社(本社・大阪府河内長野市)は先月28日からエレベーターのボタンなどを直接押したくないときに役立つ「つまようじ屋の非接触棒」の販売をオンラインショップで開始した。

販売を始めて数日間で「4―500件の注文が入って、すごく驚きました」と話すのは同社専務取締役の末延秋恵さん。コロナの影響で飲食店やホテル業界などが悲鳴を上げているなか、同社の売り上げも5割減という厳しい現実に見舞われている。それでも「8割減でもおかしくなかったが、つまようじ需要のおかげでそのぐらいで収まってくれている」と言う。近年つまようじといえば中国産が席けんしていたが「世の中、国産のものを欲している」というおかげで需要がある。

そして末延さんはあるTwitterで見かけた写真をきっかけに新商品を思いつく。それは中国・武漢で撮影された写真で、人がエレベーター内に設置されたつまようじを使ってボタンを押しているものだった。先端をとがらせる前の状態の“つまようじ完成直前”の棒を「非接触棒」として売り出そうと考えた。

条件もそろっていた。元々、材料は国産にこだわり、北海道産白樺材を加工していた。ところが3年前に北海道の協力工場が火災に見舞われた。つまようじに使う白樺材は焼け残っていたため、大阪に送ってもらったが、湿気で商品にはならなかった。そんな焼却処分するしかない材料が倉庫に大量に余っていた。末延さんの中で「つまようじになれなかった棒たち」とTwitterで見た武漢のエレベーター写真がつながったわけだ。構想2日、大量生産ができるまでの準備に2週間、スピード商品化だった。

パッケージは専務自らデザインした。「つまようじ屋の 非接触棒 さぁ思う存分つつくがよい」とインパクト十分な見た目だ。長さ6センチ、直径2.2ミリの棒をエレベーターのボタンや自動販売機、インターホンなど直接押したくないときに使ってほしいと言う。

「モノづくりを生業にしているだけに、コロナに負けたくない」という気持ちがあったと末延さん。使用済み入れもセットされて価格は568円(税別)。「コロナ(567)」に負けないという意味を込めた値付けだ。

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