新型コロナで見直される「パソコン」…テレワークや子供向け 半導体株、株式相場の支えに

山本 学 山本 学

 SDメモリーカードが必要で、週末に住宅地の中にある家電量販店に足を運ぶと、意外に買い物客が多くて驚いた。なかでも品定めをする人が集まっていたのはパソコンのコーナーだ。だいたい10万―15万円を中心とした海外メーカーのノートブック型パソコンが人気だという。残念ながら20万円近くになる日本のメーカーのノートブック型は第一候補にはなっていないようだ。購入後のサポートなどに多少の差はあるようだが、パソコンの性能は、メーカーやブランドで決まらないことを多くの消費者が知っているということだ。

 スマートフォンやタブレットの普及で、家にパソコンを置いておく必要はなくなりつつあった。スマホの画面を使った文字入力「フリック入力」は得意でも、キーボードで文字を打つのは苦手という若者の話がメディアに取り上げられる機会も増えていた。だが、足元では再びパソコンが売れているようだ。人気が復活したというよりは、新型コロナウイルスの影響で出勤せずに家で仕事をする「テレワーク」が増えたからだ。会社に接続して使うので、少し前から家にあった自宅のパソコンでは性能が追いつかないケースが多いという。このため自宅のパソコンを買い直す動きが広がった。

 さらに小学校でプログラミング教育が必修になるのも今年度から。中学校でも来年度から必修になる。「子供のためにもなるなら」というのがノートブック型を買い直す背中を押している。さらに量販店の店頭には、7―8万円の子供向けパソコンが大きく展示されていた。店員に聞いてみると、中には2台まとめて買う客もいるのだそうだ。少し前まではスマホやタブレット、薄型テレビが家電量販店の花形だったが、パソコンが押しも押されもせぬ花形商品に取って代わったということだ。

 パソコンに似たもので「サーバー」の需要も増えているという。やはり新型コロナの影響だ。これまでテレワークにそれほど積極的でなかった中小の製造業などでも、出勤者数を抑える必要に迫られた。このため従来は各自のパソコンや、社内で書類を共有するためのサーバーの代わりにクラウドサービスの利用が増えているという。共有する書類を外注のデータセンターに移動して、社外からでも書類に触れられるようにした。結果としてコストが下がり、セキュリティの水準が上がるといったケースも多く、データセンターの利用が伸びているという。

 次世代の通信規格「5G」の本格展開や、道具やセンサーをネット接続して常時情報収集・常時監視する「IoT」といった技術が普及するとの見方らか、半導体関連株はすでに昨年から堅調な動きだった。新型コロナウイルスの感染拡大を嫌気して2月下旬からの約1カ月に株式相場は全体が加速度的に下落したが、早くも立ち直ろうとしているのが半導体関連だ。パソコン、サーバーの需要が伸びていることで、CPU(中央演算装置)それも最新のものが売れているというわけだ。しかも日本だけでなく世界で伸びている。

 CPUメーカーでは、たとえば米国のインテルは2月半ばに65〜66ドル近辺で推移していたが、3月16日には43ドル台と35%程度下落したが、足元では60ドル近辺まで上昇している。米アドバンスド・マイクロ・デバイシズ(AMD)はナスダック市場で2月19日に59.27ドルを付けた後、3月18日に36.75ドルまで下げた。それから1カ月が経過して57ドル近辺まで回復。下落した分をほぼ取り戻した形だ。半導体関連株の代表的な指標である米フィラデルフィア証券取引所の半導体株指数も戻り歩調をたどっている。

 日本株にCPU専業の銘柄はないが、例えば半導体製造装置を見てみよう。半導体のウエハ表面に電子回路を形成する前工程にかかわる製造装置の大手、東京エレクトロン(証券コード8035)は2月13日の2万5875円が、3月23日に1万6370円まで下落した。これが1月に入って2万3600円まで下げ渋る場面があった。下げ幅の3分の2強を取り戻した形だ。半導体製造装置で後工程の代表銘柄であるアドバンテスト(6857)は2月14日の5940円が、3月19日に3335円まで下落。これが4月下旬に5100円台を付ける場面も目立った。半導体関連のしっかりとした戻りは、最近の株式相場全体の支えにもなっている。

 このほかパソコン、サーバー関連で注目される業種を見てみよう。周辺機器のエレコム(6750)、アイ・オー・データ(6916)、バッファローの親会社であるメルコホールディングス(6676)などがそろって戻りを試す展開だ。半面、ハードディスクの駆動用モーターを供給している日本電産(6594)は下値を探る値動きになった。SSDメモリーに取って代わられることでハードディスクの市場は縮小。自動車向け事業のウエートが高まったことで、パソコン需要の恩恵を受けられずにいる。

 電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した3月のパソコンの国内出荷台数はデスクトップ型、ノートブック型の合計で79万2000台と昨年3月に比べて22.6%減だった。基本ソフト(OS)「ウインドウズ7」のサポート終了などで法人向けの需要で、昨年3月は1カ月で100万台超を出荷したから、もっと減るだろうと思われていた。4月は個人向けの需要でどれだけ出荷台数が押し上げられるのか。5月下旬の発表日には、いつにも増して関心が集まりそうだ。

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