「この家では産めない」18歳でホームレス妊婦に…支援受けられず公園で過ごした日々 コロナ禍の今伝えたいこと

広畑 千春 広畑 千春

 サンダルに細身のパンツ、薄手の長袖ニット2枚と上着、貯金が10万円ほど。男性に連絡すると「家を借りる」と言ってくれたが、親名義だった携帯電話は間もなく止まり、音信不通になった。産婦人科で行政が運営する母子寮を勧められたが、対象はあくまで「母と子、もしくは子どもがいる妊婦」。第1子妊娠中は対象外とされ、未成年と告げると「早く家に帰りなさい」と冷たく言われた。「いくら帰れないと言っても、分かってくれなかった」

 ゆかさんの住む市では妊婦健診補助がチケット制で、毎回数百~数千円の実費がかかる。妊婦を雇ってくれるバイトもなく、健診代を節約するためホームレス生活を始めた。夜は街をひたすら歩き回り、陽が高くなると公園のベンチで仮眠。パチンコ店や駅のトイレで寝たこともあった。3日に1回ネットカフェでシャワーを浴び、服を洗濯した。フードコートでペットボトルに水を詰め、食事は1日パン1個やスーパーの試食を回った。何も食べない日も多かった。「それでも、お腹の子どもだけが支えだった。胎動が愛おしくて、エコー写真を見ては、頑張ろうって」

 秋が過ぎ、冬に。サンダルと薄着では夜も厳しくなった。それでも、特に声を掛けられることはなかった。毎月の健診で訪れる産科には「家には帰れない」と打ち明けたが、返事は「実家があるでしょ」「ちゃんとお願いしてきてね」とだけ。待合室の幸せそうな夫婦の姿に胸が苦しくなり、勝手に涙が出た。

 臨月に入った12月初旬、限界を感じたゆかさんは「家族に迷惑がかかる」と避けてきた警察署を訪れた。手持ちの現金はわずか2千円。妊娠前に45kgほどあった体重は約40kgに減り、歩きすぎたためか子宮口は妊娠7カ月の頃から2cm開いていた。歯は抜け、腎臓や肝臓の機能も弱っていた。事情を鑑みて母子寮に一時保護されたが、職員には「あくまで例外だからね」と念を押されたという。

 年が明けて1月、男の子が生まれた。体重もしっかりあり、元気いっぱいだった。

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