京都・西陣織の金の「アマビエ」って? 伝統技法の「金襴」を活用、タペストリーやお守りでコロナ退散

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 西陣織の金襴(きんらん)の技法を用いたマスクを京都市の織物会社が発売した。新型コロナウイルスの感染拡大で暮らしに欠かせなくなったマスクを華やかにして、沈みがちな気持ちを明るくするとともに、伝統工芸にも目を向けてほしいという。疫病退散に効験があると言い伝えられる妖怪アマビエの図柄を織り出した布も手がけ、マスクとともに人気だ。

 金糸などで柄を織り出す金襴は、僧侶の袈裟(けさ)などに使われている。マスク姿が町中に増える中、西陣織工業組合加盟の岡本織物(上京区)の岡本絵麻専務(47)が金襴での作成を発案した。

 クワガタなどをモチーフにした虫や、麻の葉、雪の結晶などをあしらった。4月に売り出して以降、各地から注文が相次ぐ。目が粗いため、ウイルスや花粉などから身を守る機能は期待できないという。絵麻さんは「一般的なマスクの上に着けるなどしながら、ファッションとして楽しんでほしい」とする。

 会員制交流サイト(SNS)で話題になっている妖怪アマビエも金襴で織った。妖怪に詳しい水木しげる記念館(鳥取県境港市)によると、アマビエは江戸時代の瓦版に描かれた半人半魚の妖怪で、熊本の海に現れた。病が流行した際には「私を描いた絵を見せよ」と告げたと伝えられる。

 アマビエをあしらった布は横70センチ、縦33センチ。疫病退散、無病息災といった言葉を添えた。タペストリーとして壁に掛けたり、一部を切り取ってお守りにしたりして使われている。

 近年、葬儀の簡素化などで金襴の需要は低迷気味な上、新型コロナの影響で袈裟などが欠かせない法要の減少も懸念される。社長の圭司さん(47)は「技を後世に残すため、新たな需要を生み出しながら、多くの人に知ってもらえるようにしたい」と語る。

 柄が12パターンあるマスクは2980円と3180円、アマビエの布は1万2千円。いずれも同社の公式サイトで扱っている。

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