新たなセーフティーネットに…コロナ禍でシッター需要急増、費用の壁へ国は支援拡充「事業主は申請を」

広畑 千春 広畑 千春

 新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言が7都府県に出され、保育園や学童保育所の休園・休所も増える中、医療関係や生活に必要な仕事で休めない職種の人たちを中心に、ベビーシッターへの問い合わせがさらに急増しています。

 24時間対応のベビーシッター・家事代行サービスを全国で展開する「キッズライン」(東京都)には、電話やメールでの依頼や補助対象になるかどうかといった問い合わせが先週比で2~3割増に。1カ月前に比べると倍増しているといいます。

 「普段通わせている保育園が休園になり、困って預けたいという方が多い。医療や物流関係など休めない業種の方は保育縮小の影響を大きく受けている」と代表の経沢香保子さん。実際、関西地方在住の介護福祉士の女性は「入所者がいるから休めないし、夫は看護師で夜勤や宿直も。地方に住む両親に預ければ『コロナ疎開』と後ろ指を指されるし、保育園と学童保育頼みでやってきたけど、保育士の先生だって休みたいと思うし…罪悪感と仕事の重圧とで押しつぶされそう」と頭を抱えます。

 また、在宅勤務ができるようになった人からも悩みが続出。同社が先月、利用者の働く母親224人に行った調査では75%が「子どもがいると集中できない」と回答。「テレビ会議の画面に子どもが映り込んだり、声が入ったりしてしまう」「子供は『ママが家にいる』のに遊んでもらえず、こちらも大事なビデオ会議の際など、子供が入ってきてしまい『邪魔しないで!』と言ってしまうなど、双方に悪影響」との声もあり、休校の長期化で学習面の遅れや生活の乱れへの懸念が高まり、家庭教師の依頼も増えているそうです。

 一方で「全国一斉休校の開始直後から、保育士資格を持つ人や子育て経験のある人らから『困っている人を手伝いたい』と全国から約2500人のエントリーがあり、先月は約400人が新規登録しました。スタッフの態勢はまだ余裕があります」と経沢さん。「今後の状況次第ではありますが、安全面での管理を引き続き徹底しながら、最大限支援していきたい」と力を込めます。

 一方で、費用面の問題からシッター利用に二の足を踏む保護者も。内閣府は新型コロナ対策として3月に、ベビーシッター割引券(1回2200円)の上限を最大26万4千円に拡充する特例措置を実施。今月7日には休校延長に伴い4月以降も延長(ただし対象児童1回5枚まで)し、個人事業主にも広げる方針を示しました。

 ただ勤務する事業主からの申請が前提になっており、小学2年の子どもがいるシングルマザーの女性は、「ようやく正社員になれたら、『非課税』等の枠からも外れ、支援対象外になった。職場は在宅勤務など『できない』というスタンスで時差出勤もないし、ましてや会社がシッター補助を作ってくれるなんて夢のまた夢…」とも。

 「事業主が申請すれば、さかのぼって受給できます。領収書は保管し、従業員からも雇用主に対し声をあげてほしい」と内閣府の担当者。独自に補助を行う自治体や企業・団体もありますが、数は限られ、所得や年齢制限がある場合も少なくありません。仕事と育児で無理を重ねた末に虐待に至ってしまう危険性もあり、経沢さんは「私自身子育てをしながら仕事をしてきて、その経験が今につながっている。特に都会での育児は孤独になりがち。今回の危機に可及的速やかに対応できるインフラとして、最大限の努力で支えていきたい」としています。

・ベビーシッター割引券を発行した承認事業主一覧(公益社団法人全国保育サービス協会HPより)

http://www.acsa.jp/htm/babysitter/approvai_proprietor_list.htm

・割引券が使えるシッター事業主一覧(同)

http://www.acsa.jp/htm/babysitter/ticket_handling_list.htm

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