保護猫のために描く異色の有名漫画家の思い…展覧会「ねこのじかん」開催中

山本 智行 山本 智行

 14人の猫好き作家による作品展「ねこのじかん」が大阪市都島区の「花音 hanane t-shirt living」で開催されている。19日まで。出展者の1人、泉麗香さんは広告漫画家として活躍していたが、保護猫活動の存在を知り、方向転換。猫の漫画本を出版するなど広報活動にも力を入れている。

 「猫と時間」をテーマに大阪を拠点に活動している猫好き作家が集まった。作風もジャンルも様々。漫画家・イラストレーターの泉さんも今回、6作品を出展した。その実力は日本イラストレーター協会が選ぶ「世界を魅了した新進気鋭のイラストレーター」に名を連ねていることでも分かっていただけるだろう。

 漫画家としての経歴も異色だ。10歳でテレビアニメ「海のトリトン」などに影響を受け、漫画家を夢見た。

 「恋愛ばかりの少女漫画より少年漫画家がいい。最終的には人の役に立つ漫画を描きたい、と思っていました」

 しかし、やがて夢を断念。その後、結婚して母親に。PTAの委員になったことで、再び道がつながっていく。全くの独学だったというが、やがて企業や自治体から依頼が届くようになった。

 例えば、交野市の広報誌「広報かたの」では市のキャラクター「おりひめちゃん」の4コマ漫画を長期連載。その他にもサイゼリヤ、大阪トヨペット、パナソニック、読売新聞、ABCなど企業の訴えたいポイントなどを分かりやすく、漫画で伝えていった。もちろん、ヒアリングや取材をして題材を掘り下げていったのは言うまでもない。

 あるときは福祉漫画家として、老人ホームに飛び込み取材。現場の生の声を反映させたことで滋賀県のコンペで優勝した。サイゼリヤの案件は200人のイラストレーターの中から選ばれた。

 また仏画も描けることから神社や仏閣からも依頼が舞い込む。それを機に開いた仏画展では絵の前で手を合わせる人や絵にインスパイアされ、自然に踊り始める人を見て自身も心を打たれた。

 ただ、その一方でどこか違和感を感じていたのも事実。「広告も人のためにはなりますが、心がずっとチクチクしていました。モノやサービスを売ることが目的の広告の漫画ではなく、モノやサービスの良さを伝え、気づいてもらえる広報漫画家になろうと決めました」

 いま力を入れている保護猫活動もその一環。きっかけを与えてくれたのはオス8歳の愛猫ドルチェだった。寝屋川市のホームセンター「ビバホーム」内にあるペットショップで出会ったノルウェージャン・フォレストキャットだ。

 「私はドルチェのことが大好きで、彼が大好きな散歩によく出掛けるんですが、その途中で見掛ける野良猫はだれも構っている人がいない。そのことを不憫に思い、調べていくうちに猫の保護活動に貢献したいと思うようになりました。自分にできることは漫画で伝えること」

 今年2月には「知ってる?保護猫のこと」という文庫本サイズの漫画本を出版。ルビをふるなど、こどもにも分かるように気配りしている。令和2年2月22日の「猫の日」には神戸北野美術館で開催した「猫を愛する芸術家の仲間展」でお披露目し、売り上げを保護猫活動に寄付してもいる。今後は学校、図書館などで配布したい考えだ。

 「これからも人のためになる漫画を描いていきたいです。猫のために漫画を描いた人といわれるのが本望です」

▼ねこのじかん
【日時】4月1日~19日午前10時~午後5時(2、9、16日の木曜日休廊)
【場所】大阪市都島区御幸町1丁目3-28「花音 hanane t-shirt living」
▼泉麗香HP https://reika-izumi.com/

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