小学4年生の息子がゴミステーションに捨てられていた子猫を保護し、自宅に連れて帰って来た。最初はどうなることかと思ったが、失明のピンチを乗り越えると、同居していた愛犬2匹の子育てサポートもあり、すくすくと成長していった。
もう少し遅ければゴミ収集車に…
2009年4月27日。大阪市内に住んでいた深川さん宅に小学4年生の息子が友人を連れ、帰ってきた。その日は可燃ゴミの日だった。
「おばちゃん!オレはアカンって言ってんけど…」
気まずそうに話し出す友人。息子の方を見ると、小さな子猫を両手で大事そうに包み込んでいた。深川さんが「何があったの」と尋ねると、子猫がお菓子箱に入れられ、ゴミステーションに捨てられていたと答えた。
子猫にはまだへその緒が付いており、産まれて間もない状態。あと数十分遅ければ、ゴミとしてゴミ収集車に回収されていたかもしれない。深川さんは2人に「よく連れて帰ってきたね」と語りかけ、子猫を温めると、すぐに病院へ向かった。
診察してもらうと、両目には膿みがたまっており、失明のおそれがあった。先生は「助からないかもしれない」と厳しい表情を浮かべた。深川さんは子猫を助けるため、2、3時間ごとに強制給餌を行い、子供たちは猫に近寄って「ニャーニャー」と話しかけた。そのかいあって奇跡的に命を食い止めた。子猫の名前はそれからニャーニャーになったが、その後、すぐにジェームズになった。
ジェームズは自力でミルクを飲むことができるようになり、すくすくと順調に育っていった。深川さんは小学4年生の息子にもミルクの与え方や世話の仕方を教えた。
慣れない子育てに苦労したが、そこへ思わぬ助っ人が現れた。それは自宅で飼っているチワプーのすみれちゃん。いつも一緒に添い寝して子守をしていたが、驚いたことにこれで母性本能がわいたのか、ジェームズのお尻を刺激して排泄させていたのだ。
保護して8日ほど経つと、片側の目が開いた。失明の可能性があったため、開いた眼を見て息子と大喜びした。しかし喜びも束の間、今度は酷い脱肛で手術をするとになった。
まだ小さな体。不安でしかたがなかったが、手術は無事成功した。育てる中で何度か冷や冷やすることがあったが、徐々に体も大きくなり、息子もミルクを与えるのが上手くなっていった。気付けば、小さかったジェームズも部屋の中をジェットコースターのように走り出すほど元気に。とてもワンパクな性格だ。
このころになると、自宅で飼っているもう1匹の愛犬マルプーのらんちゃんも子育てに参加してくれた。その後は息子と犬2匹でジェームズを大切に育て、犬と猫が仲良しの家族になった。
そんなジェームズも今年の4月で11歳。人間の歳で言うと60歳の高齢猫だ。小さいころとはまるで性格が変わり、クールになった。
しかし、実家を離れた息子が帰って来るとジェームズはいつもべったり甘えてくる。ジェームズは助けてくれた恩を持ち続けている。
最後にひと言。猫は3月~5月にかけて出産シーズンを迎えます。外で猫の遺棄を見かけた時は、すぐ警察に連絡を。現在の法律では、動物の遺棄は100万円以下の罰金と定められています。