家族ができて“居場所”ができた! 街中を放浪中おまわりさんに保護されたシーズーのがん助君

岡部 充代 岡部 充代

 2016年3月19日、兵庫・西宮市に暮らす新山崇さん、美智恵さん夫妻に新たな家族ができました。推定5歳のシーズー、がん助君です。

 がん助君は兵庫・明石市内をさまよっていたところを交番のおまわりさんに保護されました。1週間待っても飼い主は現れず、飼育放棄とみなされて、ボランティアの家に預けられたのだそうです。その家で暮らすこと約3か月。『ペットのおうち』という里親募集サイトに掲載されるもなかなか出会いがなく、掲載期限が迫っていたとき、新山さん夫妻の目に留まりました。

 

 犬を飼いたいと言い出したのは美智恵さんでした。ペットを飼える家に引っ越したのが大きかったようですが、「転勤で西宮に来て友達もいなかったから、そういうのもあったんじゃないでしょうか」と崇さんは振り返ります。

 美智恵さんは初めから“里親”になろうと決めていました。

「テレビでブリーダー崩壊とか、飽きたからと言って捨てる飼い主がいることを知って、ペットショップで買うんじゃなくて、里親募集している子をと思っていましたね」(美智恵さん)

 

 最初はトイプードルを中心に探しましたが、いいなと思った子はすぐに決まってしまい、犬種関係なく見ていると、がん助君(当時の名前は金太郎君)のページに行きついたと言います。推定5歳。「パピーじゃなくて大丈夫かな?」という不安もよぎりましたが、『性格・特徴』の欄を読むといい子そうです。そして何より、捨てられていたということにショックを受け、家族になりたいと思いました。

「ブリーダーの飼育放棄もつらいですけど、一度は誰かに飼われていたのに…と思うと、余計にショックでしたね」(美智恵さん)

 掲載期限が迫っていたこともあり、美智恵さんはすぐにエントリー。トライアル初日から用意したベッドに入るなど、「頑張ってなじもうとしてくれていた」(崇さん)そうです。保護主さんを追いかけることもなかったと言いますから、「ボクはここの家の子になるんだ」と理解していたのかもしれません。

 

 新山家に来てから、車で出掛けるのが大好きになったがん助君。崇さんには忘れられない思い出があります。

「うちに来て間もないころ、一緒に奈良公園に行ったんです。初めての遠出だったんですけど、すごくうれしそうな顔をして飛びついてきたんですよね。目が輝いていました。そこから変わったような気がします。ワガママも言うようになって、本当の意味でうちの子になった感じですね」(崇さん)

 今ではすっかり“がんちゃんファースト”の生活になり、外食するのも旅行に行くのも一緒。どうしても連れて行けないときは日帰りにしています。

「これからも彼が楽しいと思うことをしてあげたいですね。頸椎のヘルニアを手術したときは何十万円も掛かりましたし、甲状腺異常が見つかったので薬を飲み続けないといけない。経済的負担は大きいけど、それ以上のものをもらっているので感謝しています」(崇さん)

 

 放浪していたところを保護された犬ですから、それまでどのような生活をしていたかは分かりません。ただ、美智恵さんはアニマルコミュニケーターの方にみてもらったことがあるそうです。

「劣悪な環境にいたようで、この子には自分の所有物も居場所もなかったと言われました。少し鳴いただけで大きな声を出されていたらしく、『ボクなんて、ボクなんて…』と思いながら暮らしていたと。黒い物を誰かにあげませんでしたか?と聞かれて、がん助があまり気に入っていなかったリュックを友達にあげた話をしたら、やっとできた自分の物がなくなって、嫌なわけじゃないけどすごく気にしています、ちゃんと説明してあげてくださいって言われました(苦笑)」(美智恵さん)

 

 動物とコミュニケーションが図れるという人の言葉を信じるか、信じないかは人それぞれ。でも、何も話していないのにリュックのことを言い当てられたら…私なら信じます!

 そのコミュニケーターさんはこうも言っていたそうです。

「今はもったいないくらい幸せだって言っていますよ」

 里親募集サイトに掲載されていた写真よりも今のがん助君のほうが若々しく見えるのは、たくさんの愛情を受けているからに違いありません。

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