岡山の企業が卒業生のためにタイムカプセルを製作 地元の小中学校5校にプレゼント

國松 珠実 國松 珠実

「子どもたちの良い思い出になれば」と、岡山県赤磐市の地元企業が「タイムカプセル」をつくり、市内の小中学校5校にプレゼントした。直径25センチ、高さ30センチの円筒形で、底をかぶせネジで封印する。この春、新型コロナウイルスの感染予防のために簡素化された卒業式を迎えた子どもたちの門出を、タイムカプセルで社員も祝った。卒業式当日は卒業生が自身に宛てた手紙を収め、成人式などで開封される予定だそう。

つくったのは、コンプレッサーやエアータンクなどを年間5,000缶以上生産する「富士鋼業」(岡山県赤磐市)。突然の新型コロナウイルスによる臨時休校で、せめて学校生活最後の思い出に役立ててもらいたいと、市内の小中学校5校の卒業式に合わせての贈呈となった。

本格的に製造に着手したのは、卒業式のあった3月19日の1週間前。もともと、材料の調達も含め数カ月で製造する予定のものだったが、「どうやったら1週間でできるか」と知恵を絞った。普段使う材料で、品質を保つための工夫と改良へのアイデアを出しあい、なんとその日のうちに図面を引き、しかも翌日5つとも完成させたという。

同社は、2019年の春に「自分たちが面白いと思うことをやってみよう」と社長が声をかけ、若手5人とベテラン2人が『富士わっしょいプロジェクト』を立ち上げた。社内の活性化をを目的に、社の敷地内で5月と10月に祭りをひらいたり、商品化を視野に新製品のアイデア募集を行ったりした。各部署から出たアイデア製品は、溶接やタンクの製造技術を活かしたもの。祭りで展示して、訪れた取引業者や地域の人たちから幅広く意見を聞き、精度を上げている。そのような活動から出た一つがタイムカプセルだ。

富士鋼業の社長は、隣県の兵庫県姫路市の「感動会社楽通」の田村社長が立ち上げた「おもしろアイデア研究所」の研究員だ。「本気でふざけて儲ける」をモットーに、異業種や同社の社員が集まり新商品や新サービスのアイデアを出しあう。楽通の田村社長は、「卓越した技術や経験を持つ大人が本気でふざけて、柔らかい頭で考えるととてつもないイノベーションを起こすのです。今求められているのは日本人が持つ高度な技術に加え、自由な発想からくるアイデア。それらは今回のタイムカプセルのように、利益に直結しなくてもその企業の宣伝媒体になったり、別の分野への進出につながったりする。思い切った冒険ができるのが中小企業の魅力です」。

その事例が、同じく田村社長がサポートするアルミ加工の「アコオ機工」(兵庫県赤穂市)だ。社長の後押しで「バカ社長シリーズ」として社内の若手らが造った1台15万円の輪ゴム銃が、ある機械メーカーのコンテストで賞を取った。第2第3の商品も開発中。「若い人のアイデアを採用するチャレンジングな会社」という同社への新たなイメージが、新たな取り引きを生み、販路を広げている。

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